人事は、採用、労務、教育、制度設計など幅広い業務を担います。
担当者のキャリアアップはもちろん、未経験からチャレンジする人は、「資格を取ってスキルアップしたい」「強みとなる知識を身につけたい」と考えるのではないでしょうか。
人事担当は、実績を数字など目に見える情報でアピールするのが難しい職種ですので、私は転職を考え始めたときに資格取得を目指しました。
人事の仕事では、求められるスキルを把握して、関連する専門知識や適性を証明できる資格取得が有利です。
ここでは、人事に役立つ資格を目的別にご紹介します。
人事に資格は必要?取得のメリットとは
人事の仕事は資格がなくても就くことができます。資格を取得することで得られるのは、次のようなメリットです。
- 業務の体系的な知識が習得できる
- 専門性をアピールでき、転職や社内評価で有利
- 法律や制度の変化に強くなれる
人事の業務は幅広く、業種や組織の規模などによって担当者の業務範囲も変わってきます。
資格を取得するには、キャリアの方向性に合わせて、求められるスキルを的確に把握することが重要になります。
資格選びのポイント|目的別に考えよう
人事に役立つ資格を選ぶには、まず「どの分野で活かしたいか」を明確にします。次のように分類すると選びやすくなります。
- 採用や相談業務に活かす資格
→キャリアコンサルタント、産業カウンセラーなど - 労務・給与業務に強くなる資格
→社会保険労務士、衛生管理者、簿記など - 業務全般、その他
→メンタルヘルス・マネジメント検定、人事総務検定、TOEICなど
人事に役立つ資格おすすめ7選
人事担当者におすすめの資格を7つ紹介します。それぞれの資格の特徴や活かせる業務も解説していきます。
社会保険労務士
資格の種類 | 国家資格 |
おすすめ度 | ★★★★★ |
対象業務 | ・労務管理 ・労働・社会保険手続き ・各種規程の作成 ・人事制度の設計など |
社会保険労務士は、人事労務や労働・社会保険の専門家としての国家資格です。
社労士の業務が企業の仕組みに直結するものなので、人事のキャリアアップに最適です。
労務分野に興味のある人や、制度設計などの領域で活躍したい人には、特におすすめです。
試験情報
- 受験資格
・大学、短期大学卒業
・大学における修得単位数
・高等専門学校(5年制)卒業 など - 試験日
年1回(8月) - 試験地
北海道、宮城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、香川、福岡、熊本、沖縄 - 試験内容
・労働基準法及び労働安全衛生法
・労働者災害補償保険法
・雇用保険法
・労務管理その他の労働に関する一般常識
・社会保険に関する一般常識
・健康保険法
・厚生年金保険法
・国民年金法 - 合格率
6~7% - 問い合わせ
全国社会保険労務士会連合会 試験センター
衛生管理者
資格の種類 | 国家資格 |
おすすめ度 | ★★★★☆ |
対象業務 | ・作業環境の管理 ・労働衛生教育の実施 ・健康保持増進措置 |
一定規模以上の企業では、衛生管理者の選任が義務付けられています。
オフィスや工場など働く人の安全と健康を守る衛生管理者は、あらゆる業種で必要とされる資格ですので、人事労務の転職、キャリアアップで役立ちます。
第一種・第二種があり、業種によって必要な区分が異なります。
試験情報
- 受験資格
・大学(短期大学を含む)または高等専門学校を卒業し、その後1年以上の労働衛生の実務経験者
・高等学校または中等教育学校を卒業し、その後3年以上の労働衛生の実務経験者
・10年以上の労働衛生の実務経験者
・その他の受験資格は安全衛生技術試験協会サイトを参照 - 試験日
毎月(各地区安全衛生技術センターにより異なる) - 試験地
全国の各地区安全衛生技術センター - 試験内容
・第一種:有害業務に係るものを含む関係法令と労働衛生、労働整理など(3時間)
・第二種:有害業務に係らない関係法令、労働衛生、労働整理など(3時間) - 合格率
・第一種:40%程度
・第二種:50%程度 - 問い合わせ
公益財団法人 安全衛生技術試験協会
衛生管理者については、こちらの記事で詳しくご紹介します。

キャリアコンサルタント
資格の種類 | 国家資格 |
おすすめ度 | ★★★★☆ |
対象業務 | ・キャリア相談 ・キャリア支援 ・採用面接 |
社員のキャリア相談や支援、採用面接のスキルアップに有効な資格です。
面談スキルや傾聴力を高めることで、より信頼される人事担当者を目指せます。研修や人材開発の分野でも活かせます。
企業の人事のほかに、人材サービス業界でも有利です。公的機関や地域のNPOなどの職員として活躍している人もいます。
試験情報
- 受験資格
・厚生労働大臣が認定する講習の課程の修了者
・労働者の職業の選択、職業生活設計または職業能力開発および向上のいずれかに関する相談に関して3年以上の経験者
・技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験または実技試験の合格者 - 試験日
・学科:5月、8月、11月、翌年2月
・実技論述:5月、8月、11月、翌年2月
・実技面接:6月、9月、12月、翌年3月 - 試験地
札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、沖縄 - 試験内容
・学科(筆記試験・マークシート方式)
・実技論述(記述式)
・実技面接(ロールプレイ・口頭試問) - 合格率
・学科:60%程度
・実技:70%程度 - 問い合わせ
厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援課
キャリアコンサルタントについては、こちらの記事で詳しくご紹介します。

産業カウンセラー
資格の種類 | 民間資格 |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
対象業務 | ・社員相談 ・メンタルヘルス対応 ・面談支援 |
産業カウンセラーは、働く人の相談に応じて、助言したりメンタルケアをする仕事です。
メンタルヘルス対策の重要性が高まるなか、人事担当者としても活用できる資格です。カウンセリング技法や心理学の基礎を学べるため、面談対応力を高めたい人に向いています。
試験情報
- 受験資格
・受験日に20歳以上で、協会が行う産業カウンセリングの学識及び技能を修得するための講座の修了者
・その他の受験資格は公式サイト参照 - 試験日
・学科:1月
・実技:1月 - 試験地
東京、名古屋、大阪、広島、 高松、福岡(学科) - 試験内容
・学科:産業カウンセリング概論、カウンセリングの原理・技法など
・実技:口述試験とロールプレイ - 合格率
70%程度(総合合格率) - 問い合わせ
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
メンタルヘルス・マネジメント検定試験(Ⅰ種)
資格の種類 | 公的資格 |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
対象業務 | ・働く人の心の不調の未然防止 ・職場のメンタルヘルスケア |
メンタルヘルス・マネジメント検定は、職場で必要なメンタルヘルスケアに関する知識、技術、態度を取得する公的検定です。
検定には3つのコースがあり、Ⅰ種が人事労務管理者向けのマスターコースとなっています。
試験情報
- 受験資格
誰でも受験できる - 試験日
Ⅰ種:11月 - 試験地
札幌、仙台、さいたま、千葉、東京、横浜、新潟、浜松、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、高松、福岡 - 試験内容
・企業経営におけるメンタルヘルスケア対策の意義と重要性
・メンタルヘルスケアの活動領域と人事労務部門の役割
・ストレスおよびメンタルヘルスに関する基礎知識
・人事労務管理スタッフに求められる能力
・メンタルヘルスケアに関する方針と計画
・相談体制の確立
・教育研修 ほか - 合格率
10~18% - 問い合わせ
メンタルヘルス・マネジメント検定試験センター
人事総務検定
資格の種類 | 民間資格 |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
対象業務 | 人事総務の実務全般 |
人事業務に関する知識を幅広く学べる実践的な検定です。
レベルに応じて1級〜3級まであり、未経験でも基礎から学べる点が魅力。人事の基本を体系的に押さえたい人におすすめです。
試験情報(3級)
- 受験資格
誰でも受験できる - 試験日
年2回(3月、10月) - 試験地
LEC校舎 - 特別認定講習
3級は認定講習を修了することで取得可 - 試験内容
・人事総務の主な仕事内容
・労働保険・社会保険の仕組み
・労働保険・社会保険の新規適用手続き
・従業員の採用手続き
・従業員の退職手続き
・給与計算に関する基礎知識
・個人情報、マイナナンバーの基礎知識 - 問い合わせ
一般社団法人 日本人事総務協会
人事総務検定については、こちらの記事で詳しくご紹介します。

TOEIC(R)L&R TEST
資格の種類 | 民間資格 |
おすすめ度 | ★★★★★ |
対象業務 | ・海外対応業務 ・海外赴任 ・外国人社員の対応 |
TOEIC(R)L&Rテストは、英語で聞く・読む能力を測定する世界共通の判定試験です。
企業のグローバル化が進み、TOEICスコアを採用、昇格・昇進、海外赴任などの基準に用いる企業が増えています。
日常業務で英語を使用しなくても、あらゆるキャリアステージで求められます。
試験情報
- 受験資格
誰でも受験できる - 試験日
毎月1回(実施回数は受験地ごとに異なる) - 試験地
全国のエリアごとの試験会場 - 試験内容
・リスニングセッション
・リーディングセッション - 問い合わせ
一般社団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
転職で必要となる英語力については、こちらの記事でご紹介します。

人事資格は目的と実務で選ぼう
大企業の人事担当者はより専門性が求められ、中小企業やベンチャー・スタートアップ企業では、管理部門として複数の業務を担当することが多く、幅広い経験を持つ人材が求められる傾向があります。
資格を取得するには、「自分がどの分野で強みを持ちたいか」「実務にどれだけ活かせるか」を基準に考えることが重要です。
まとめ|人事は資格でスキルを磨こう
資格を取得することは専門知識を身につけ、スキルを磨くことに役立ちます。
資格を業務でそのまま活用できるとは限らなくても、人事労務系のキャリアを進もうと考えている人であれば、資格を取得しておいて損になることはありません。
特に経験が浅い人やキャリアチェンジの転職では有効なアピール材料になるはずです。
私は転職を考え始めたときに、人事系のキャリアの強みとなる資格として、社労士を選びました。
試験に合格したことで、評価がアップするなど状況が変わり、転職することは見送りましたが、キャリアの強みとして十分活用できました。
自分に合った資格を見つけて、キャリアアップするための参考になれば幸いです。
参考:厚生労働省、各試験実施機関
試験情報は変更になる場合がありますので、最新情報は各実施機関の公式サイトをご確認ください。