人事担当者がキャリアアップや転職を考えるとき、「何が強みになるか?」「何をアピールしようか?」と考えるのではないでしょうか。私がそうでした。実績を数字など目に見える情報でアピールするのは難しい職種ですので、少し焦るような気持ちにもなりました。
人事担当者のキャリアアップには、求められるスキルを把握して、関連する専門知識や適性を証明できる資格取得が有利です。
ここでは、人事部門で役立つ資格について選び方と活用法をご紹介します。
人事担当者に求められるスキル
人事の業務は幅広く、業種や組織の規模などによって担当者の業務範囲も変わってきます。
資格を取得するには、どのようなキャリアに進みたいかの方向性に合わせて、求められるスキルを的確に把握できるかがとても重要になります。
人事部門の業務とスキル
大企業の人事担当者はより専門性が求められ、中小企業やベンチャー・スタートアップ企業では、管理部門として複数の業務を担当することが多く、幅広い経験を持つ人材が求められる傾向があります。
人事系の主な職務
- 人員計画・採用計画
- 異動・配置
- 昇給・昇進・昇降格(人事評価)
- 給与や退職金、労働時間など労務管理
- 労働組合との労使交渉
- 給与計算・社会保険手続き
- 人事制度の企画・立案・導入
- 新卒や中途の採用活動
- 社内研修全般 など
求められる能力
- コミュニケーション能力
- 企画立案・推進力
- 経営感覚
- 戦略的な知識・思考力
- 人に対する共感力
- トラブル対応力
- モラル
- 実務処理能力
- 情報収集力 など
人事部門で役立つ資格
人事業務の多くは資格が必須というわけではありませんので、採用条件になっていないことも多いでしょう。応募するときに必要はなかったとしても、業務に関連する資格はキャリアアップを有利に進めるアピール材料になります。
人事担当の専門性をアピールできる資格をご紹介します。
社会保険労務士
社会保険労務士は、人事労務や労働・社会保険の専門家としての国家資格です。一般企業の人事部門では、人事制度、就業規則、労務管理の業務、労働・社会保険の手続きなどがあります。
社労士の業務が企業の仕組みに直結するものなので、人事部門のキャリアアップに最適です。
受験資格
- 大学、短期大学卒業
- 大学における修得単位数
- 専門学校卒業
- 高等専門学校(5年制)卒業
- 定められた国家試験合格者や条件を満たす有資格者 など
試験日
年1回(8月)
試験地
北海道、宮城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、香川、福岡、熊本、沖縄
試験内容
- 労働基準法及び労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
合格率
6~7%程度
問い合わせ
全国社会保険労務士会連合会 試験センター
資格の活用法
雇用形態や働き方の多様化で労働問題は増加しています。社会保険労務士は人事労務の専門知識が身についていることを証明できるので、実績が少ない人の転職にも有効です。
社労士のおすすめテキストについてはこちらの記事でご紹介します。

衛生管理者
衛生管理者は、事業場の作業環境の管理、労働者の健康管理、労働衛生教育の実施、健康保持増進措置などを行う国家資格です。
オフィスや工場など働く人の安全と健康を守る衛生管理者は、あらゆる業種で必要とされる資格ですので、人事労務の転職、キャリアアップで役立ちます。
受験資格
- 大学(短期大学を含む)または高等専門学校を卒業し、その後1年以上の労働衛生の実務経験者
- 高等学校または中等教育学校を卒業し、その後3年以上の労働衛生の実務経験者
- 10年以上の労働衛生の実務経験者
- その他の受験資格は安全衛生技術試験協会サイトを参照
試験日
毎月(各地区安全衛生技術センターにより異なる)
試験地
全国の各地区安全衛生技術センター
試験内容
- 第一種
有害業務に係るものを含む関係法令と労働衛生、労働整理など(3時間) - 第二種
有害業務に係らない関係法令、労働衛生、労働整理など(3時間)
合格率
- 第一種:40%程度
- 第二種:50%程度
問い合わせ
公益財団法人 安全衛生技術試験協会
資格の活用法
過労死や職場のメンタルヘルスが社会問題となり、業種を問わず役割が大きくなっています。人事労務・総務部門のエキスパートを目指す資格として注目されます。
衛生管理者のテキスト&問題集
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、働く人が適性、能力、経験などに応じて、効果的に職業選択や職業生活設計、職業能力の開発ができるように相談に応じたり、助言、指導を行う国家資格です。
受験資格
- 厚生労働大臣が認定する講習の課程の修了者
- 労働者の職業の選択、職業生活設計または職業能力開発および向上のいずれかに関する相談に関して3年以上の経験者
- 技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験または実技試験の合格者
試験免除
- キャリアコンサルタント学科試験または実技試験においてどちらか片方の合格者は、合格している試験を免除
- 技能検定キャリアコンサルティング職種の1級または2級の学科試験、実技試験のどちらか片方の合格者は、キャリアコンサルタント試験の対応する試験を免除
試験日
- 学科:5月、8月、11月、翌年2月
- 実技論述:5月、8月、11月、翌年2月
- 実技面接:6月、9月、12月、翌年3月
試験地
札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、沖縄
試験内容
- 学科(筆記試験・マークシート方式)
・職業能力開発促進法その他関係法令に関する科目
・キャリアコンサルティングの理論に関する科目
・キャリアコンサルティングの実務に関する科目
・キャリアコンサルティングの社会的意義に関する科目
・キャリアコンサルタントの倫理と行動に関する科目 - 実技論述(記述式)
- 実技面接(ロールプレイ・口頭試問)
合格率
- 学科:60%程度
- 実技:70%程度
問い合わせ
厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援課
資格の活用法
企業の人事部門だけでなく、人材サービス業界の転職・キャリアチェンジにも有利です。公的機関や地域のNPOなどの職員として活躍している人もいます。
キャリアコンサルタントの資格取得についてはこちらの記事でご紹介します。

メンタルヘルス・マネジメント検定試験
メンタルヘルス・マネジメント検定は働く人の心の不調の未然防止や活力ある職場づくり、職場で必要なメンタルヘルスケアに関する知識、技術、態度を取得する公的検定です。
検定には3つのコースがあり、Ⅰ種が人事労務管理者向けのマスターコースとなっています。
受験資格
誰でも受験できる
試験日
Ⅰ種:11月
試験内容
- 企業経営におけるメンタルヘルスケア対策の意義と重要性
- メンタルヘルスケアの活動領域と人事労務部門の役割
- ストレスおよびメンタルヘルスに関する基礎知識
- 人事労務管理スタッフに求められる能力
- メンタルヘルスケアに関する方針と計画
- 相談体制の確立
- 教育研修 ほか
合格率
10~18%
問い合わせ
メンタルヘルス・マネジメント検定試験センター
資格の活用法
人事労務管理者向けのⅠ種を取得すれば、人事労務やメンタルヘルスケア関連の業務で有利に活用できます。
メンタルヘルス・マネジメント検定試験の公式テキスト
産業カウンセラー
産業カウンセラーは、働く人の相談に応じて、助言したりメンタルケアをする仕事です。日本産業カウンセラー協会が実施する民間資格です。
受験資格
- 受験日に20歳以上で、協会が行う産業カウンセリングの学識及び技能を修得するための講座の修了者
- その他の受験資格は公式サイト参照
試験日
- 学科:1月
- 実技:1月
試験内容
- 学科:産業カウンセリング概論、カウンセリングの原理・技法など
- 実技:口述試験とロールプレイ
合格率
70%程度(総合合格率)
問い合わせ
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
資格の活用法
従業員のメンタルケアにかかわる人事部門などの転職でアピール材料にすることができます。
TOEIC(R)L&R TEST
TOEIC(R)L&Rテストは、英語で聞く・読む能力を測定する世界共通の判定試験です。業種・職種を問わず、採用選考などの基準として参考にする企業が多くなっています。
受験資格
誰でも受験できる
試験日
毎月1回(午前と午後の2回)
※10月は月2回実施
試験地
全国のエリアごとの試験会場
試験内容
マークシート方式
- リスニングセッション:約45分・100問
・写真描写問題
・応用問題
・会話問題
・説明文問題 - リーディングセッション:75分間・200問
・短文穴埋め問題
・長文穴埋め問題
・1つの文書/複数の文書
問い合わせ
一般社団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
スコアの活用法
企業のグローバル化が進み、TOEICスコアを採用、昇格・昇進、海外赴任などの基準に用いる企業が増えています。日常業務で英語を使用しなくても、あらゆるキャリアステージで求められます。
転職で必要となる英語力についてはこちらの記事でご紹介します。

個人情報保護士
個人情報保護士は、企業内の個人情報保護に関するスタンダード資格です。「個人情報保護士認定試験」に合格すると認定を受けることができます。
受験資格
誰でも受験できる
試験日
3月、6月、9月、12月
試験地
- 公開会場受験:全国の実施会場
- オンライン受験:インターネット環境を整備できる場所
試験内容
- 課題Ⅰ:個人情報保護の総論
- 課題Ⅱ:個人情報保護の対策と情報セキュリティ
合格基準
課題Ⅰ、課題Ⅱの正答率各70%以上
問い合わせ
一般財団法人 全日本情報学習振興協会
資格の活用法
ほぼすべての企業に個人情報保護法が適用されることとなり、人事部門はもちろん、個人情報を扱う多くの職種で役立つ資格といえます。
まとめ
資格を取得することは専門知識を身につけ、スキルを磨くことに役立ちます。資格を業務でそのまま活用できるとは限らなくても、人事労務系のキャリアを進もうと考えている人であれば、資格を取得しておいて損になることはありません。特に経験が浅い人やキャリアチェンジの転職では有効なアピール材料になるはずです。
私は転職を考え始めたときに、人事系のキャリアの強みとなる資格として、社会保険労務士を選びました。試験に合格したことで、評価がアップするなど状況が変わり、転職することは見送りましたが、キャリアの強みとして十分活用できました。
自分に合った資格を見つけて、キャリアアップするための参考になれば幸いです。
人事総務検定については、こちらの記事でご紹介します。

社会人の学習法については、こちらの記事でご紹介します。

参考:厚生労働省、各試験実施機関
試験情報は変更される可能性があるため、最新情報は各実施機関の公式サイトをご確認ください。