人材サービス業界は、企業と働く人を支援する重要な役割を担っています。企業の人事・採用担当との親和性が高く、相互の転職も多くあります。
また社労士の専門性をあらゆる事業で活用できるため、資格取得を推奨している企業もあります。
ここでは、人材サービス業界の概要、求められるスキルや資格、転職活動についてご紹介します。
人材サービス業界のキャリア
働き方が多様化し、キャリアの選択肢が広がるなかで、人材サービス業界は転職先としても注目されるようになっています。
人材サービス業界とは
人材サービスには、求人広告事業、人材紹介事業、人材派遣事業、請負事業を主として採用関連業務の代行や人材育成の研修など多彩な事業があります。
これらを総合的に提供する総合人材サービスから専門的に特化して提供するサービスまで幅広く展開されています。
人材サービスの種類
- 求人広告
- 人材紹介(職業紹介)
- 人材派遣(労働者派遣)
- 業務請負
- 再就職支援サービス
- 人材育成・キャリア形成支援サービス
- 人事コンサルティングサービス
- 給与計算・福利厚生サービス
人材サービスの事業
人材サービス業界は、幅広い事業を展開し、企業や個人にサービスを提供しています。
求人広告
求人広告は、企業の求人情報を掲載し、求職者へ情報提供するサービスです。
求人広告会社は企業の求人広告を媒体に掲載して、求職者へ情報提供しています。インターネット求人広告はシェアが高く、求人情報インフラとして普及しています。
人材派遣
人材派遣は、企業に対して、一定期間の契約で人材を派遣するサービスです。多くの場合、短期的なプロジェクトや特定のスキルが求められる業務で活用されます。
派遣会社が雇用元となり、派遣社員の指揮命令権は派遣先企業にあります。仕事があるときに派遣される登録型と、派遣会社の正社員(または契約社員)として雇用され、企業に派遣される常用型があります。
製造業などのエンジニアに多い常用型は、一般の登録型派遣より派遣料が高く設定されています。
人材紹介
人材紹介は、正社員や契約社員など、直接雇用を前提とした人材を企業に紹介するサービスです。採用のミスマッチを防ぐために、求人企業と求職者双方のニーズを深く理解する力が求められます。
企業と就業を希望する人との仲介を行って、双方の希望を満たすような採用の実現を目的としています。
登録型とヘッドハンティングに代表されるサーチ(スカウト)型がありますが、人材紹介会社の多くは登録型です。紹介予定派遣のように職業紹介と派遣を融合したサービスの提供も増えています。
業務請負
業務請負は、業務を請け負い、労働力を確保するサービスです。
請負会社は、請負契約に基づき、製造、営業などの業務を一括して請け負います。請負契約であるため、請負会社に労働者の指揮命令権があります。受け入れ会社は請負会社を通してしか指示できません。
コンサルティング
人材関連のコンサルティングは、人材開発の領域で、リーダーシップやキャリア形成を支援するサービスや企業の課題を分析し、人事制度の立案・構築を支援するサービスなどがあります。
アウトソーシング
アウトソーシングには、採用プロセス全体や一部を外部に委託するサービスや給与計算や福利厚生を外注するサービスがあります。業務の効率化を図る目的で利用されることが増えています。
人事コンサルタントについてはこちらの記事でご紹介します。
人材サービスの職種
人材サービス(派遣・紹介)には、特有の職種があります。それぞれの業務を企業やエリア、案件ごとなどに担当します。
営業
営業担当は、求人企業の開拓や求人申込の受付など企業と直接対応します。数社が競合することがほとんどで、受注の際、営業担当は求人企業のニーズを正確に把握することが求められます。
登録
登録担当は、派遣や転職希望者の登録手続きを行います。登録シートの内容を踏まえ、面談やスキルチェックにより適性を診断します。
マッチング
マッチング担当は、求人企業のニーズに合う人材を登録者の希望、適性、スキルなどから検討し、候補者を決めます。候補者が応募を決めて、就業が確定すると、マッチング終了となります。
コンサルティング
コンサルティング担当は、登録者のスキルアップやキャリアプラン、選考通過に役立つノウハウの提供、アドバイスなどを行います。
人材サービス業界で求められるスキル
人材サービス業界では、さまざまなスキルや適性を活かすことができます。特に以下のスキルは重視されます。
コミュニケーション能力
企業の人事・採用担当や求職者とのやり取りが中心となるため、高いコミュニケーション能力が求められます。相手のニーズを正確に把握し、それに応じた提案を行う力が必要です。
問題解決力
「人」に携わる業務には多くの問題が発生します。予測できなかったトラブルが起こった場合にも、どのように対処するか、適切な解決策を見つける力が重要です。
セールススキル
企業に対してサービスを提案し契約を獲得する営業活動も業務の一部です。そのため、セールススキルは欠かせません。
マルチタスク能力
多くのクライアントや求職者を同時に担当する必要があるため、効率的にタスクを管理する力が求められます。
人材サービス業界で役立つ資格
人材サービス業界では、キャリアや労働に関する専門的な知識やスキルが役立ちます。資格を取得することで、専門性を証明し、信頼性を高めることができます。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、キャリア相談に応じてアドバイスや指導をする専門家の国家資格です。人材サービス業界では特に重要な資格の一つとされていています。
- キャリア支援に関する体系的な知識が身につく
- 相談者の適性を的確に判断できるようになる
- コンサルティング力が向上する
- フリーで活動することも可能
キャリアコンサルタントの資格取得についてはこちらの記事でご紹介します。
社会保険労務士
社労士は、人事労務や社会保険に関する専門家の国家資格です。人材サービス業界では、労働法や労務管理の知識も重要ですので、あらゆる職種で役立てることができます。
- 労働に関する専門知識を習得できる
- 法律に基づいた適切なアドバイスができるようになる
- 企業からの信頼が高まる
勤務社労士の仕事についてはこちらの記事でご紹介します。
人材サービス業界の展望
人材サービス業界は、人材不足を背景に業界市場や企業規模が拡大傾向にあります。採用だけでなく、育成、給与、評価、業務改善など幅広い分野での貢献が期待されています。
社会的意義
企業と働く人の支援を行うことで、雇用の創出や人材活用の最適化に貢献します。仕事のやりがいを感じやすい業界といえます。
成長可能性
日本では少子高齢化が進む一方で、多様な働き方が広がっています。リモートワークや副業を含む柔軟な働き方を支援する人材サービスは、今後ますます需要が高まるでしょう。
多様なキャリアパス
人材サービス業界で培ったスキルは、営業、コンサルティング、経営企画など幅広い分野で活かすことができます。
転職成功のためのステップ
人材サービス業界は展開するビジネスによって、業務も社風もかなり違います。事前に理解を深めておくことが大切です。
業界・企業を研究する
人材サービス業界についてよく理解することが大切です。特に、自分がどの事業領域に関心があるのかを明確にしましょう。例えば、人材派遣に特化する企業とコンサルティングを主軸とする企業では、求められるスキルや働き方が異なります。
自己分析を行う
自分のスキルや経験がどのように業界で活かせるのかを分析します。これまでの経験で培ったスキルが、人材サービス業界でどのように役立つかを整理しましょう。
必要なスキルを磨く
求められるスキルが不足している場合は、スキルアップする姿勢が評価されます。資格を取得したり、講座やセミナーに参加するのもよいでしょう。
求人情報を収集する
企業の採用ページや転職サービスなどから求人情報を収集します。自分の希望条件を明確にして、希望に合った求人をリストアップしましょう。
志望動機を明確にする
人材サービス業界への転職理由をしっかりと整理しておきましょう。この業界でどのような貢献ができるのか、自分の目標と照らし合わせながら明確に伝えることが大切です。
面接対策を行う
人材サービス業界では、面接でのコミュニケーション能力や問題解決力が重視されます。具体的な成果やエピソードを用いて、自分の強みをアピールできるよう準備しましょう。
転職するうえでの注意点
人材サービス業界は企業の人事・採用担当と親和性が高いとはいえ、管理部門とサービス業では働き方や求められる成果は全く異なります。
就業環境の確認
人材サービス業界は、特に繁忙期には業務量が多くなる傾向があります。それぞれの企業の働き方や職場環境を確認しましょう。
企業文化の適合性
企業ごとに文化や社風が異なります。自分に合った企業を選ぶことが、長期的なキャリア成功の鍵となります。
まとめ
転職市場が活発になり、人材サービス業界は堅調に成長を続けています。少子高齢化の人材不足や働き方の多様化が進むなか、今後も人材に関連するビジネスは拡大することが予想されます。
転職を成功させるためには業界特有のスキルや適性を理解して、しっかりとした準備を行うことが大切です。人材サービス業界を目指す人に少しでも役立つ情報があれば幸いです。
参考:人材サービス産業協議会、日本人材派遣協会、日本人材紹介事業協会