キャリアコンサルタントは、個人のよりよいキャリアを支援する専門家の国家資格です。
終身雇用が一般的ではなくなり、働き方が多様化するなかで、企業の人事部門では社員のキャリア形成を支援する役割も期待されるようになり、キャリアコンサルティングの重要性が高まっています。
ここでは、企業の人事部においてキャリアコンサルタントの専門性をどのように活かせるのか、具体的な業務とキャリアパスについてご紹介します。
人事部のキャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングやカウンセリングスキルを活用して、企業の成長戦略や人材育成に貢献できます。
人事部では、主に次のような業務に活かすことができます。
- 社員のキャリア形成支援
- 人材育成と研修の企画・実施
- 人材開発と配置・異動の支援
- メンタルヘルス対策のサポート
- エンゲージメント向上の支援
- 採用活動の支援
それぞれについて、詳しく説明していきます。
社員のキャリア形成支援
キャリアコンサルタントの最も基本的な役割は、社員一人ひとりのキャリア形成を支援することです。社員が自身のキャリアプランを明確にし、適切なキャリア選択ができるように促します。
企業内に相談窓口を設置し、社員が自身のキャリアについて気軽に相談できる環境を整えることが求められます。
具体的には、定期的なキャリア面談を実施し、社員のキャリアビジョンを明確化するサポートを行います。また、自己分析やスキルアップのアドバイスを提供し、社員が自発的に成長できるよう促します。
専門性の活かし方
- キャリア意識調査の実施
社員のキャリアに対する意識や悩みをアンケートなどで調査する。 - 個別キャリア面談の実施
社員のキャリアビジョンを明確にし、適切な助言を行う。 - キャリアプランのサポート
社員に目標設定とスキルアップのためのプランを提案。
人材育成と研修の企画・実施
企業において人材育成は重要な課題の一つです。キャリアコンサルタントは、社員のキャリア開発を支援するために、研修プログラムの設計や実施にも関与します。
キャリアデザイン研修やリーダーシップ研修など、社員の成長を促す研修を企画し、職種やキャリアステージに応じた育成機会を提供します。
また、社員のニーズを把握し、スキルアップに必要なトレーニングを提供することで、企業全体の生産性向上にも貢献できます。
専門性の活かし方
- キャリア形成を支援する研修の企画・実施
自己分析やキャリアデザインを学べる研修を企画・実施する。 - スキルアップ研修の企画・実施
社員の成長を目的とした研修を企画・実施する。 - キャリア開発プログラムの構築
職種やキャリアステージに応じた研修プログラムを開発する。
人材開発と配置・異動の支援
企業が持続的に成長するためには、社員を適材適所に配置することが不可欠です。
キャリアコンサルタントは、社員の適性や希望を把握し、それに基づいた配置や異動の提案を行うことで、社員のパフォーマンス向上を支援します。
営業職からマーケティング職への異動など、社員のスキルや志向に合ったキャリアパスを設計することで、企業と社員双方にとって最適な人材配置を実現できます。
専門性の活かし方
- 適材適所の支援
社員の適性を見極め、最適な部署・職種への配置をサポートする。 - 異動の支援
キャリアパスに沿った異動・昇進を提案する。 - 社内のキャリアモデルの作成
各職種ごとに、キャリアの進め方やスキル要件を明確にする。
メンタルヘルスのサポート
キャリアコンサルタントは、キャリア形成や育成の支援だけでなく、メンタルヘルスケアの観点からもキャリアの支援を行うことができます。
キャリアに関する悩みやストレスを抱える社員に対して、キャリア相談を実施して、適切なサポートを提供することで、精神的な負担を軽減できます。
専門性の活かし方
- キャリアに関する相談
仕事に関するストレスや悩みを相談できる環境を整え、離職率の低下を目指す。 - メンタルヘルス対策の実施
メンタルヘルス研修や外部専門機関との連携。
エンゲージメント向上の支援
キャリアコンサルタントのキャリア相談を通じて社員のモチベーションアップに貢献できます。
キャリアの展望が明確になることで、エンゲージメントが向上し、結果として企業の生産性や定着率の向上につながります。
専門性の活かし方
- エンゲージメント調査の実施
社員のモチベーションや満足度を測定し、改善点を洗い出す。 - キャリアワークショップの開催
社員が自身のキャリアについて考える機会を提供する。
採用活動の支援
キャリアコンサルタントは、採用プロセスにおいてもそのスキルを活かすことができます。
採用面接では、応募者の適性や志向を見極め、企業の求める人物像とマッチしているかを判断することができます。
入社後のキャリア支援も含めた長期的な視点での採用戦略を立案することで、ミスマッチを防ぎ、優秀な人材の確保につなげることができます。
専門性の活かし方
- 採用面接
応募者のキャリア志向や適性を見極めるスキルを発揮する。 - 採用選考
入社後のキャリア形成を見据えた人材選定を行う。
キャリアコンサルタントの人事部門でのキャリア
キャリアコンサルタントは、社員のキャリア形成を支援する専門家として、企業の人事部門で活躍することができます。
採用・育成・評価・配置などの業務を通じて従業員の成長を促し、組織の発展に専門性を活用することができます。
ジュニアレベルのキャリアコンサルタント
人事部の新卒または未経験からキャリアコンサルタントとして業務を行う場合、次のような業務を担当するのが一般的です。
キャリアアドバイザー
- 求職者や新入社員へのキャリア相談を行う。
- 採用支援業務(書類選考、面接準備など)を行う。
- 研修の運営をサポートする。
この段階では、キャリアに関わる業務の基礎的なスキルを身につけ、実務経験を積むことが重要です。
ミドルレベルのキャリアコンサルタント
数年の経験を積むと、より専門的な業務に携わることができるようになります。
キャリアコンサルタント/人材開発担当
- 採用戦略の立案し、実行する。
- 研修プログラムを企画し、実施する。
- 社員のキャリアパス設計をサポートする。
- 人材育成・配置に関するコンサルティング業務を行う。
このレベルでは、実務担当者から組織全体の人材戦略を考える立場へとステップアップしていきます。
シニアレベルのキャリアコンサルタント
さらに経験を積み、管理職としての立場になると、組織のキャリア開発をリードする役割に進むことができます。
人事マネージャー/キャリア開発責任者
- 人材戦略を策定して、実行する。
- 組織全体のキャリア開発方針を策定する。
- 経営層へ人事戦略を提案する。
- キャリアコンサルタントの育成・指導をする。
このレベルになると、人事部門のリーダーとして組織の成長に貢献する役割が求められます。
経営レベルのキャリアコンサルタント
最終的に、キャリアコンサルタントの知識・経験を活かして企業の経営に関わるポジションに進むこともできます。
人事部長/CHRO
- 企業全体の人材戦略の統括する。
- 組織文化の形成をリードする。
- 社員エンゲージメントの最大化する。
- 経営層との連携を強化する。
このレベルでは、特定の業務や役割ではなく、企業経営の重要な意思決定に関与する立場となります。
キャリアアップに必要なスキルと資格
人事部門でキャリアコンサルタントとしてキャリアを築いていくには、次のようなスキルや資格が評価されます。
スキルアップの例
- 対人スキル
コミュニケーション力、カウンセリング力 - 分析力
採用や人材開発に関するデータ分析力 - 企画力
研修や人材戦略の立案能力 - マネジメント力
人事部門のリーダーとしての管理能力 - 資格
人事関連の資格(社会保険労務士など)
人事担当に有利な資格については、こちらの記事でご紹介します。

キャリアコンサルタントとしての戦略
企業内でキャリアコンサルタントとして成功するためには、次のような成長戦略が有効です。
キャリア戦略の例
- 継続的な学習
キャリアカウンセリングや人事関連の最新トレンドを学ぶ。 - ネットワーキング
他のキャリアコンサルタントや人事担当者との交流を深める。 - 実務経験の積み重ね
幅広い業務を経験し、スキルの幅を広げる。 - マネジメント経験の獲得
チームを率いる経験を積む。
まとめ
キャリアコンサルタントが人事部門で活躍するためには、スキルを磨き、段階的にステップアップしていく必要があります。
ジュニアレベルからスタートし、シニアレベル、マネジメント層、さらには経営層へとキャリアアップしていくことで、組織に貢献しながら自分のキャリアを発展させることができます。
キャリアコンサルタントとしての専門性を活かし、企業と社員の成長を支える存在となることができるでしょう。
キャリアコンサルタントの資格を取って、人事部で活かしたい人の参考になれば幸いです。
人事・総務部門の主な担当
★人事部門の採用担当になるには
★人事部門の研修担当になるには
★人事部門の労務担当になるには
★人事部門の給与担当になるには
★人事部門の社会保険担当になるには
★人事総務の総務担当になるには
キャリアコンサルタントの資格については、こちらの記事でご紹介します。

キャリアコンサルタント養成講座については、こちらの記事でご紹介します。
