社会人としてある程度経験を積むと、「もっと専門的な知識を身に付けたい」「キャリアの幅を広げたい」と感じることがあるのではないでしょうか。
あるいは資格取得を目指そうとして学歴の受験資格があって断念したことがある人もいるかもしれません。
キャリアアップや独立に有利な国家資格のなかには、試験を受けることに一定の条件を設けているもの(受験資格)があります。
働きながら大学に通うことは、大きな決断であり、挑戦でもあります。ここでは、社会人が大学に進学するための準備や学び方についてご紹介します。
社会人の大学進学
多くの社会人が自分磨きやキャリアアップのために大学で学んでいます。既に社会人として働いている人が、新たに大学で学びたいと考える理由は何でしょうか。
社会人が大学に行く理由
社会人は資格や免許を取得したり、専門知識を身につけたいという理由で大学を目指すことが多いといえるでしょう。
キャリアアップのため
多くの社会人が大学進学を検討する理由は、キャリアで活かすためです。
特定の分野で専門的な知識や資格を得ることで、昇進や転職の可能性が広がります。特に専門職や管理職を目指す場合、高度な学位が求められることも少なくありません。
新しい分野への挑戦
仕事を続けていると「別の分野に挑戦したい」と感じることがあります。大学で新しい分野の勉強を始めることで、自分の可能性を広げ、これまでとは別のキャリアに進むこともできます。
例えば、エンジニアが経営学を学んだり、または文系の職種の人がIT分野に挑戦する、といったケースです。
人脈形成や自己実現
大学は知識だけでなく、人脈を築く場にもなります。社会人学生としての経験や視点を共有することで、同じ志を持つ仲間と深い関係を築けることも大きな魅力です。
また、「自分の夢を実現するために学び直す」という自己実現の目的も大切です。
大学進学の準備
働きながら大学に通う場合、時間と学費の確保がとても重要になります。事前に具体的な計画を立てておきましょう。
時間の確保と管理
- 日常生活の見直し
平日や休日の時間の使い方を記録し、学習に充てられる時間を把握する - 優先順位の明確化
仕事や家庭の優先度と学業のバランスを考え、無理のない計画を作る - スケジュール管理
カレンダーやタスク管理アプリを使って、スケジュールを効率的に管理する
学費の計画
大学進学には学費が必要です。事前に学費の見積もりを行い、予算を検討しましょう。
社会人であれば教育訓練給付金を利用できる可能性が高いと思いますので、確認してみることをおすすめします。
教育訓練給付制度についてはこちらの記事でご紹介します。

入試情報の収集と受験対策
社会人向けの優遇があれば、上手に活用することをおすすめします。
通信制大学や通信教育課程のある大学は、自分のペースに合わせて学習することができます。入学資格があれば、書類選考だけで入学できるところが多く、比較的、学習をスタートさせやすいといえます。
大学への入学資格がない人には、特修生制度を設けている大学もあります。志望校の募集要項を確認し、必要書類や試験日程を早めに把握しましょう。
進学の方法
- 社会人入試
働きながら学びたい人を対象にした試験。自己推薦書や面接を重視 - 通信制大学や夜間学部
働く人に配慮されたカリキュラムを提供
通信制大学・通信教育課程
自宅で学習できる通信教育部を持つ大学は全国にあります。テレビ、ラジオ、インターネットで学ぶことができる放送大学もあります。
また通学部でもインターネットを活用して授業を行う大学も増えてきています。
大学や短大を卒業している人は、これから目指したい資格や免許の取得に必要な科目を選択して履修することができます。
卒業するためには、スクーリングに参加することが必要になりますが、それ以外は自宅学習で自分のペースで進めることができます。仕事との両立もしやすいといえます。
正科生
正科生は大学の正規の課程を履修します。正科生として入学するには、高校卒業など大学に入学するための資格が必要になります。
多くの大学では、正科生の2年次、3年次への編入学制度を設けていますので、学歴などの資格により卒業までの期間を短縮することができます。
科目等履修生(教職)
教職の科目等履修生は、大学や短大を卒業している人が教員免許を取得するために、必要な教職課程の科目を選択して履修することができます。
保育士や図書館司書、社会福祉士などの資格・免許を取得することもできます。
科目等履修生(教養)
教養の科目等履修生は、知識や教養を身につけることを目的として、どの科目でも自由に選択して学ぶことができます。
入学資格に制限はありませんが、履修しても、単位としては認定されない場合があります。
特修生
特修生は大学の入学資格がない人でも、大学の科目を学ぶことができます。
特修生の入学資格は18歳以上としている大学が多く、正科生の入学資格取得を目的とするものもあります。
その場合、所定の単位を修得するか、大学が実施する認定試験に合格すれば、正科生の1年次に入学することができます。
通信教育の学習方法
通信制大学や大学の通信教育課程では、自宅で学習を進めることができますが、卒業するためには決められたスクーリングに参加しなければなりません。
仕事をしている場合、スクーリングの期間は仕事との調整が必要ということになります。スクリーニングは多様な社会人学生と交流して、人間関係を築くことができるという魅力があります。
履修科目
正科生の場合には、通学部と同じように、一般教育科目、外国語科目、専門教育科目、教職科目、保健体育課目などから履修科目を選びます。
基本的に通学部と同じレベルで卒業に必要な単位数も変わりません。
授業方法
授業の方法には、教材(テキスト)を使った授業、放送授業、面接授業(スクーリング)、メディアを利用して行う授業があります。
通信教育課程では、大学から指定された教材によるテキスト授業(自宅学習)が主体となります。
一定の単位のテキスト授業が終わると、決められた課題のレポートを作成して、提出します。
レポートをすべて提出して、合格すると、科目ごとに単位修得試験が行われます。単位修得試験は、大学のキャンパスや全国の主要都市で実施されます。
放送授業は、放送大学によるテレビやラジオ、インターネットを利用した授業方法です。インターネットを活用して動画配信で講義を行う授業は、通学せずに、メディア授業だけで卒業できる大学もあります。
スクーリング授業
通信教育課程のカリキュラムでは、通常、スクーリング授業が必須になっています。
決められた時期や場所で実施される教室の授業で、卒業に必要な総単位数の4分の1に相当する単位を修得しなければなりません。
昼間のスクーリング授業の多くは、夏期に集中して行われます。そのほか、主要都市で集中講義を行ったり、土曜日・日曜日に実施される授業もあります。社会人にも日程調整しやすいように工夫されています。
卒業論文
卒業論文は、テーマを決めて、教員の指導を受けながら作成します。社会人が多い通信教育課程では、仕事や地域などに関連するものが多いという特徴があるようです。
大学の選び方
社会人としての経験を経て、大学に入学したいと考える人には、資格や免許を取得したい、キャリアチェンジ・キャリアアップのために専門知識を身につけたいなどの明確な目的があるでしょう。目的を実現するために一番ふさわしい大学を選ぶことが大切です。
大学で取得可能または受験資格を取得できる資格や免許であっても、すべての通信制大学や通信教育課程に該当するコースが設けられているわけではありません。
通信制大学や通信教育課程では取得できない資格や免許を取得したい場合には、通学が必要となります。夜間部があれば、仕事と両立することができます。
通信制にも夜間部にも該当するコースがなければ、日中の通学が必要となりますので、仕事と両立することはかなり難しくなります。
勤務先にキャリアアップのための休職制度などがあれば利用して通学することができます。
大学で取得可能または受験資格を取得できる資格・免許(例)
- 各種教員免許
- 幼稚園教諭・保育士
- 福祉系資格(介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士)
- 医療系資格(医師・看護師・薬剤師・歯科衛生士・理学療法士・作業療法士)
- 栄養系資格(栄養士・管理栄養士)
- 建築・土木系資格(建築士・測量士)
大学進学後の生活
働きながら勉強するのは簡単ではありませんが、両立するために工夫できることがあります。
勉強と仕事の両立
- 学習環境
集中できる場所を確保し、学習専用の時間を設ける - 短時間学習
通勤時間や昼休みを使い、短時間でも学びを進める - 周囲の協力
家族や周囲に理解してもらう
社会人ならではの視点
社会人は実務経験を持っているため、授業内容を実際の仕事に結びつけて考えることができます。これにより、学んだことをすぐに応用して、実践力を磨くことができるのが強みといえます。
周囲のサポート
大学生活をスムーズに進めるためには、家族や周囲の理解が大切です。通学や勉強時間の確保など協力を得られるようにしておきましょう。
社会人が大学に行くことのメリットと課題
社会人が大学に行くことのメリットは多いですが、厳しさもあります。目標を達成するには明確な目的意識や計画的なスケジュール管理が欠かせません。
メリット
- キャリアの幅が広がる
専門知識や資格を取得することで、新しい仕事に挑戦しやすくなる - 知識の深掘り
興味のある分野を専門的に学べる - 人脈の形成
同じ志を持つ仲間と出会い、学びを共有できる
課題
- 時間的・経済的な負担
仕事と学業の両立や学費の負担 - モチベーションの維持
忙しい生活のなかで学ぶ意欲を保つことが難しい
まとめ
通信制大学や通信教育課程では、多くの社会人が仕事を続けながら学んでいます。4年間で卒業することはできますが、仕事と両立しながら6年程度かけて卒業する人も少なくありません。
社会人が通信制大学や通信教育課程で学び、仕事を続けながら卒業するためには、「取得したい資格・免許がある」、「専門知識を修得してキャリアアップしたい」など明確な目的意識をもつことが大切といえるでしょう。
働きながら大学に進学し、卒業することは、多くの準備と努力が必要となりますが、それ以上の価値を提供してくれるはずです。キャリアの幅を広げるだけでなく、自己実現や新たな人脈の形成といった多くのメリットを得られます。
学んでみたいという思いがあるのなら、「学び」に遅すぎはない!ですので、新たな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
社会人におすすめの資格についてはこちらの記事でご紹介します。

参考:政府広報オンライン、厚生労働省、文部科学省