人事系のメジャー国家資格として、社会保険労務士があります。キャリアコンサルタントはキャリア形成の支援を行う国家資格で、こちらも人事部門で活用できます。
デジタル化やAIの導入が進み、人事の役割は「管理部門」から、より戦略的な役割を求められるようになっています。
「社会保険労務士」と「キャリアコンサルタント」は、それぞれどちらか一つでも活躍できますが、ダブルライセンスで戦略部門としての人事でさらに力を発揮できます。
ここでは、社労士とキャリアコンサルタントのダブルライセンスについて解説していきます。
社会保険労務士とは?キャリアコンサルタントとは?
社会保険労務士とキャリアコンサルタントは、実際に両方取得している人も多い資格です。
まずは、それぞれの資格について、役割を確認しておきましょう。
社会保険労務士の役割
社労士は、人事労務や労働・社会保険に関する専門家です。社労士には、企業運営をサポートして働く人の就業環境を整える役割があります。
社労士には独占業務があり、独立開業できますが、企業内で活用している人も多い資格です。
- 労働・社会保険の手続き
- 各種規程の作成や整備
- 人事制度の構築や導入
- 労働トラブルの対応
キャリアコンサルタントの役割
キャリアコンサルタントは、個人のキャリア相談に応じたり、職業選択を支援する専門家です。
雇用環境や労働市場の変化に応じて、働く人のキャリア形成をサポートする役割があります。
- キャリアコンサルティング
- 転職・再就職の支援
- キャリアデザインの支援
- 働き方のアドバイス
ダブルライセンスの効果
社労士とキャリアコンサルタントの専門領域は異なりますが、雇用・労働分野の専門家として、企業の労務管理と社員のキャリア支援の両方をカバーすることで、より総合的な貢献ができるようになります。
具体的には、次のような活用ができます。
- 企業の人事部門でキャリア相談や研修、人材開発業務など
- 企業や医療関連でメンタルヘルスマネジメントなど
- 人材サービス業界のあらゆる職種
- ハローワークなどの公的支援機関
- 社労士、キャリアコンサルタントとして独立
人事担当が資格をダブル取得すると、次のような効果が期待できます。
- スキルの幅が広がる
→労務対応だけでなく、キャリア支援にも対応できるようになる - 社内での信頼性が向上
→相談できる社内アドバイザーとしての立ち位置を築ける - 人事としての市場価値が高まる
→転職市場でも専門性の高さが評価されやすくなる
社会保険労務士/キャリアコンサルタントの資格取得
社労士とキャリアコンサルタントは、いずれも国家資格です。資格を取得するには、まず、試験に合格する必要があります。
社労士になる流れ
社労士になるためには、1年に1回実施される「社会保険労務士試験」に合格して、社労士名簿への登録を受ける必要があります。(登録要件あり)
①受験資格を満たす
社労士試験を受けるには、大きく分けて3つの受験資格があります。いずれか1つを満たしている必要があります。
- 学歴
・大学・短大卒業
・専門学校卒業など - 実務経験
- 厚生労働大臣が認めた国家試験合格
②社労士試験に合格する
社労士試験は毎年8月に実施されます。計画的な学習で合格を目指すことをおすすめします。
- 試験日:年1回(8月)
- 試験地:全国の主要都市に設置された試験会場
- 試験内容:択一式試験と選択式試験
- 合格率:6~7%
- 問い合わせ:全国社会保険労務士会連合会試験センター
- 労働基準法及び労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
- 労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識
③社労士登録の要件を満たす
社労士試験に合格すれば、自動的に「社会保険労務士」になれるわけではありません。
社労士の登録をするには、2年以上の実務経験か事務指定講習の修了が必要になります。
④社労士名簿に登録する
開業する事務所や勤務先所在地の都道府県社労士会を経由して、社労士名簿への登録申請を行います。
登録が完了すると証票が発行されます。
キャリアコンサルタントになる流れ
キャリアコンサルタントになるには、学科試験と実技試験に合格して、キャリアコンサルタント名簿への登録を受ける必要があります。
キャリアコンサルタントの資格を取得していない人は、「キャリアコンサルタント」やそれと紛らわしい名称を使用することはできないことになっています。
キャリアコンサルタントは登録制(5年の更新)の 名称独占資格とされています。
①受験資格を満たす
キャリアコンサルタント試験を受けるには、認定講習の修了や実務経験などの要件があります
キャリアコンサルタント試験合格者の多くは認定講習修了者が占めています。
- 認定講習の受講・修了
- 一定の実務経験等
- 技能検定キャリアコンサルティング職種の合格者
②キャリアコンサルタント試験に合格する
キャリアコンサルタント試験は、学科試験と実技試験(論述および面接)が行われ、個別に受験できます。
学科試験は、登録試験機関である特定非営利活動法人日本キャリア開発協会と特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会が共同で、同一日に共通問題で行っています。
- 試験日:年3回(3月、7月、11月)
- 試験地:札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、沖縄
- 試験内容
・学科:マークシート方式
・実技論述:記述式
・実技面接:ロールプレイ・口頭試問 - 合格率
・学科:60%程度
・実技:70%程度 - 問い合わせ:厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援課
- 学科
・キャリアコンサルティングの社会的意義
・キャリアコンサルティングを行うために必要な知識
・キャリアコンサルティングを行うために必要な技能
・キャリアコンサルタントの倫理と行動 - 実技論述
・キャリアコンサルティングを行うために必要な技能 - 実技面接
・受験者がキャリアコンサルタント役となり、キャリアコンサルティングを行う
・自らのキャリアコンサルティングについて試験官からの質問に答える
③登録手続きをする
学科試験と実技試験の両方に合格して、キャリアコンサルタント名簿への登録を受けます。
キャリアコンサルタント名簿に登録することで「キャリアコンサルタント」と名乗ることができるようになります。
④更新(5年ごと)する
- 知識講習
- 技能講習
資格取得の比較表
項目 | 社会保険労務士 | キャリアコンサルタント |
---|---|---|
受験資格 | あり | あり |
難易度 | 高め | 中程度 |
学習期間の目安 | 6~18ヵ月 | 3~12ヵ月 |
学習スタイル | 独学/通信/通学 | 通信/通学 |
どちらの資格も取得していない社会人が、これから両方の資格を目指すなら、キャリアコンサルタント→社労士の順で取得する方がスムーズです。
社会保険労務士とキャリアコンサルタントの勉強法
資格取得を目指すには、仕事との両立を前提にした勉強法の工夫が欠かせません。
社労士とキャリアコンサルタントそれぞれの効果的な学習ポイントをご紹介します。
社労士の学習ポイント
社労士は、試験科目数が多く、難易度が高い試験とされています。試験の全体像を把握して、計画的に学習することをおすすめします。
試験は午前80分、午後210分で行われますので、時間配分や集中力など本番の形式に慣れておくことも重要です。
- インプットとアウトプットを並行する学習
→テキストを覚えるだけでなく、過去問で理解を定着させる - スマホやタブレットを使ってスキマ時間を活用
→社会人はスキマ時間をいかに活用できるかがポイント - 本試験の時間配分を意識して模試を活用
→本番に実力を発揮するには「慣れ」が重要
キャリアコンサルタントの学習ポイント
キャリアコンサルタント試験の勉強は、基本的に「受験資格を得られる認定講習」+「試験対策」のセットになります。
- まずは講習に集中
→知識とロールプレイをしっかり身につけることがポイント - 実技対策は型を覚えて、ペア練習で感覚を磨く
→ 録音して自分の面談を振り返るのも効果的 - 直前期は重点復習
→事例問題と論述の頻出テーマを重点的に復習
講習カリキュラム
認定講習は、指定された実施機関で受講できます。それぞれの実施機関によって、開催地や実施形態が違いますので、自分に合った講座を選んで受講することになります。
全体の半分以上を通学で行う必要があり、通信講座であってもスクーリングが含まれます。
- キャリアコンサルティングの社会的意義
- キャリアコンサルティングを行うために必要な知識
- キャリアコンサルティングを行うために必要な技能
- キャリアコンサルタントの倫理と行動
- その他
キャリアコンサルタント養成講座については、「キャリアコンサルタント養成講座おすすめ比較:受験資格の取得に」の記事でご紹介します。
まとめ|社労士×キャリアコンサルタントでスペシャリストに!
人事の仕事は、これまで以上に「人と組織の未来」に責任を持つポジションになっていくと考えられます。
企業で働く社労士であれば、キャリアコンサルタントの専門性は、より社員に近い業務におけるスキルを磨くことに役立ちます。
「社労士×キャリアコンサルタント」のダブルライセンスは、実務力と信頼性を高める強みになり、スペシャリストとしての可能性を広げることになるでしょう。
社労士のダブルライセンスについては、こちらの記事でまとめてご紹介します。

人事で役立つ資格については、こちらの記事でご紹介します。

参考:厚生労働省、全国社会保険労務士会連合会、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会、日本キャリア開発協会
試験情報は変更される可能性があるので、最新情報は試験実施機関の公式サイトをご確認ください。