社会保険労務士は、それだけで人事系のメジャー資格ですが、他の資格をプラスして、業務の幅を広げたり、開業の強みにしたいという人もいるのではないでしょうか。
実際、社労士の資格者のうち半数近くは、社労士の他にも資格を取得しています。
社労士のダブルライセンスは、より幅広い業務に対応して、活躍の場を広げることに役立ちます。
ここでは、社労士と相性のいい資格を厳選して、それぞれの相乗効果と活かし方をご紹介します。
社会保険労務士と相性のいい資格とは?
「2024年度社労士実態調査」によると、社労士の資格者が取得しているのは、割合が多い順に次のとおりとなっています。
- その他国家資格(宅建士、FP技能士、衛生管理者など)
- 行政書士
- キャリアコンサルタント
- 中小企業診断士
- 税理士
調査結果とも重なりますが、社労士のダブルライセンスとして、次の資格との組み合わせをおすすめします。
- 中小企業診断士
- キャリアコンサルタント
- 行政書士
- 税理士
- ファイナンシャルプランナー
社会保険労務士におすすめのダブルライセンス
それぞれの組み合わせについて、おすすめ順に解説していきますね。
中小企業診断士 × 社会保険労務士
おすすめの人:経営全般の支援、独立開業を目指している人
中小企業診断士は、経営コンサルタントの国家資格です。経営戦略や財務分析などのスキルを習得することができます。
ダブルライセンスの効果
中小企業の人事部といえる社労士と、経営コンサルタントの中小企業診断士。
この二つの資格を掛け合わせることで企業経営を総合的にサポートできるようになります。
例えば、社労士として労務管理のサポートを行いながら、中小企業診断士として企業の成長フェーズに応じた経営戦略をアドバイスできます。
顧問契約を獲得しやすくなり、単価アップが期待できるのも大きなメリットです。
ダブルライセンスの活用
- 企業の経営と労務管理のトータルサポート
労務管理や人事制度設計だけでなく、経営戦略や財務管理のアドバイスもできます。 - 助成金・補助金支援を強化
設備投資や新規事業展開に関する補助金と、雇用関連の助成金を組み合わせたサポートができます。
試験情報
- 受験資格
制限なし(誰でも受験可能) - 試験日
一次試験:8月、二次試験:10月・翌年1月 - 試験内容
第1次試験:7科目の筆記、第2次試験:筆記・口述 - 合格率
1次:約30%、2次:約18% - 試験実施機関
一般社団法人 中小企業診断協会
- 対応できる業務の幅が広がり、コンサルタント業務の受注につながる
- 独立開業を目指す人にとって安定した収入基盤を築きやすくなる
キャリアコンサルタント × 社会保険労務士
おすすめの人:企業内でキャリアアップやスペシャリストを目指したい人
キャリアコンサルタントは、個人のキャリア形成支援を専門とする国家資格です。
企業の人材育成や教育研修、人材開発などの業務と相性がいいです。
ダブルライセンスの効果
社労士とは専門領域は異なりますが、雇用・労働分野の専門家として、企業の労務管理と社員のキャリア支援の両方をカバーすることで、より総合的なサポートができるようになります。
自律的な「キャリアデザイン」の必要性が高まっていますので、社員のスキルアップ支援やキャリアプランをサポートできる社労士は、企業内外で活躍の場を広げることができます。
ダブルライセンスの活用
- 企業の人事部門でキャリア相談や研修、人材開発業務
社労士と併せて、社員のキャリア支援や研修に幅広く対応できます。 - 人材サービス業界のあらゆる職種
労務管理とキャリア相談のスキルは人材サービスでは特に重要とされます。
試験情報
- 受験資格
養成講座修了または実務経験(3年以上) - 試験日
年4回 - 試験内容
学科試験:マーク式、実技試験:論述・面接 - 合格率:学科約60%、実技約70%
- 試験実施機関
JCDA(日本キャリア開発協会)、キャリアコンサルティング協議会
- 企業の人事部門で業務の幅を広げることができる
- 人事コンサルタントとして独立することも可能
行政書士 × 社会保険労務士
おすすめの人:独立開業で強みを増やしたい人
行政書士は、許認可申請や契約書作成などを専門とする国家資格です。
身近な法律家として人気資格で、社労士ともよく比較される資格の一つです。
ダブルライセンスの効果
行政書士として各種許認可手続きを行い、事業開始後は社労士として労務相談を行うことで、一貫したサポートを提供できるようになります。
また、外国人雇用に関するビザ申請業務も行政書士が担当できるため、グローバル人材の活用を考える企業への支援にも対応できます。
複合的なサービスを提供することで、企業の成長フェーズに応じた支援ができ、長期的なクライアントとの関係が期待できます。
ダブルライセンスの活用
- 業務の幅を広げる
労務管理や社会保険手続きなどに加えて、許認可申請にも対応できます。 - 助成金・補助金申請を強化
助成金申請と補助金申請の両面で、企業の資金調達をサポートできます。
試験情報
- 受験資格
制限なし(誰でも受験可能) - 試験日
年1回(11月) - 試験内容
法令・基礎知識(択一式・記述式) - 合格率
約10~15% - 試験実施機関
一般財団法人 行政書士試験研究センター
- 行政書士試験の合格者は、社労士試験の受験資格を満たすことができる
- 独立開業で対応できる業務の幅が広がり、顧客獲得のチャンスが増える
税理士 × 社会保険労務士
おすすめの人:総合的な企業支援、顧問契約を獲得したい人
税理士は、企業や個人の税務申告・会計を担当する国家資格です。社労士と組み合わせることで、総合的な企業支援ができるようになります。
ダブルライセンスの効果
社労士が労務管理を担当し、税理士として税務処理も行うことで、企業「労務」と「税務」から総合的にサポートできるようになります。
また、社労士と税理士は給与計算など担当があいまいになる業務もあり、ダブルライセンスでワンストップサービスを提供できると、顧客満足度向上につながります。
ダブルライセンスの活用
- 中小企業向けのトータルサポート
社会保険・労務管理と、税務・財務管理の両面からサポートできます。 - 給与計算・年末調整の一括サービス提供
給与計算や社会保険手続きとともに、年末調整までカバーできます。
試験情報
- 受験資格
学歴・職歴要件あり - 試験日
年1回(8月) - 試験内容
簿記論・財務諸表論+選択3科目(計5科目) - 合格率
科目ごとに約10~15% - 試験実施機関
国税庁
- 企業を労務・税務の両面からサポートできる
- クライアント企業との長期的な関係を築きやすい
ファイナンシャルプランナー(FP) × 社会保険労務士
おすすめの人:個人向けの相談やサービスを強化したい人
ファイナンシャルプランナー(FP)は、資産運用やライフプラン設計をサポートする資格です。
社労士の個人向けサービスとなる年金相談業務と相乗効果が期待できます。
ダブルライセンスの効果
FP資格を持つことで、従業員向けの福利厚生制度設計の提案が可能になります。
また、独立開業を目指す場合には、個人のライフプランや資産形成アドバイスも提供できるため、社労士のクライアントを法人だけでなく個人にも広げやすくなります。
ダブルライセンスの活用
- ライフプランと年金の総合アドバイス
企業の従業員向けに、退職金制度や年金相談を含めた総合的な資産形成アドバイスが可能です。 - 社労士業務+個人向けサービスの展開
法人向けの労務管理だけでなく、個人向けの年金・保険・資産運用相談も行えます。
試験情報
- 受験資格
3級はなし、2級は要件あり(3級合格、実務経験、認定講習修了等) - 試験日
年3回 - 試験内容
学科:マーク式、実技:記述式 - 合格率
3級約70%、2級約40% - 試験実施機関
日本FP協会、金融財政事情研究会
- 個人・法人の両方をクライアントにできる
- 年金相談や退職金設計など、より深い専門性を提供することができる
資格の比較表
項目 | 中小企業診断士 | キャリアコンサルタント | 行政書士 | 税理士 | FP |
---|---|---|---|---|---|
主な業務 | 経営コンサルティング、業務改善、補助金申請支援 | 個人のキャリア支援、職業相談 | 許認可申請、書類作成、官公署手続き | 税務・会計業務、経営相談 | 資産形成、保険・年金相談、ライフプラン設計 |
相性 | 非常に良い | 良い | 良い | やや良い | やや良い |
難易度 | 高い | 中程度 | 中程度 | 高い | 中程度 |
メリット | 企業経営を包括的に支援 | 労務相談+キャリア支援に強くなる | 社労士独占業務の周辺業務にも対応 | 顧問契約のチャンスが広がる | 個人向け相談に強くなる |
社労士のダブルライセンスには、メリットがある一方で、注意しておきたいこともあります。
メリット
社労士のダブルライセンスには多くのメリットがあり、ここでご紹介した資格との組み合わせは、相乗効果が高いといえます。
社労士が他の資格を取得するメリットは、主に次のとおりです。
- 提供できるサービスが増える
業務の幅が広がり、対応できる案件が増えます。 - 顧客満足度の向上につながる
ワンストップ対応が可能となり、顧客の利便性がアップします。 - 独立開業の競争力が高まる
顧問契約の単価アップが期待できます。 - キャリアの可能性が広がる
複数の専門知識を持つことで、キャリアアップや転職に有利になります。
注意点
社労士のダブルライセンスには多くのメリットがありますが、次の点には注意が必要です。
- 資格取得の負担が大きい
難しい試験に合格するために時間と費用がかかります。 - 複数の分野で専門性を維持する必要がある
資格を取得してからも継続的な勉強が欠かせません。 - 優先順位が難しくなる場合がある
業務範囲が広がり、業務の選択や管理の負担が増えます。
ダブルライセンスはキャリアの方向性や戦略に合わせて、プラスとなる場合に目指すのがよいでしょう。
まとめ|社労士はダブルライセンスで差別化&ブランディング
社労士のダブルライセンスは、次のような効果を最大限に活かしましょう。
- 業務の幅が広がる
- 収入アップの可能性がある
- クライアントの信頼性が向上する
- 独立開業に有利になる
- キャリアの選択肢が増える
- 相乗効果を生み出せる
- 安定した収入基盤を確保しやすい
独立開業に向けて、差別化やブランディングの参考になれば幸いです。
社労士の集客方法については、こちらの記事でご紹介します。

参考:厚生労働省、各試験実施機関
参照:全国社会保険労務士会連合会「2024年度社労士実態調査」
試験情報は変更される可能性があるため、最新情報は各実施機関の公式サイトをご確認ください。