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職場のハラスメント対策と社会保険労務士の役割

社労士ナビ

企業におけるハラスメント問題は、大きな人事労務の課題でもあります。職場でのハラスメントは、パワーハラスメント(パワハラ)、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)などが問題視され、企業イメージにも大きく影響するようになっています。

ハラスメントは個々の人間関係から職場の問題であると認識されるようになり、社会保険労務士には、ハラスメントを防止するために企業を労務管理の面からサポートする役割が期待されます。

ここでは、ハラスメント対策の必要性と、社労士の具体的な役割についてご説明します。

ハラスメントの防止

ハラスメントは、まず企業(経営者)が問題への理解を深め、職場全体で意識されるようになれば発生を減らせる問題です。仮に問題が起きたとしても適切な対応をして、再発防止に取り組めるでしょう。

職場におけるハラスメントとは?

職場におけるハラスメントの「職場」は通常就業している場所以外であっても、業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。

職場における「パワーハラスメント」の定義

職場で行われる1~3の要素すべてを満たす行為がパワハラに該当します。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を越えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

パワハラの代表的な言動

  1. 身体的な攻撃
    暴行・傷害
  2. 精神的な攻撃
    脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
  3. 人間関係からの切り離し
    隔離・仲間外し・無視
  4. 過大な要求
    業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
  5. 過少な要求
    業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
  6. 個の侵害
    私的なことに過度に立ち入ること

セクハラの例

  • 対価型
    職場において行われた性的な言動に対して抵抗・拒否したことで解雇、降格など不利益を受けること
  • 環境型
    職場において行われた性的な言動によって就業環境が不快なものとなり、業務遂行に支障が出ること

マタハラの例

状態や制度の利用を理由として、解雇、雇止め、契約内容の変更、就業環境を害する、降格、減給その他不利益な取扱いをすること

  • 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い
  • 育児休業の申出・取得等を理由とする不利益取扱い

ハラスメントの問題

ハラスメントは、問題のリスクを経営者や管理職が認識して、ハラスメントが発生しない職場環境にすることが重要です。

刑法上の問題

ハラスメントの一部は、刑法に抵触する行為となります。パワハラは暴行や脅迫、名誉毀損に問われる可能性があります。セクハラは強制わいせつや強姦、暴行に該当するケースがあります。

SNS上での誹謗中傷も問題視されるようになり、侮辱罪が適用されるケースがあります。企業も個人も、刑法に触れるリスクを認識し、法的観点からもハラスメント防止策を講じる必要があります。

健康上の問題

ハラスメントは、被害者の心身の健康に深刻な影響を及ぼします。職場でのパワハラやセクハラが原因で、メンタルヘルス不調を引き起こすケースは少なくありません。

そのような心理的なストレスは、生産性を低下させ、組織全体のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。病気になる前に、被害者が早期に相談できる環境を整え、適切な対応をすることが重要です。

マネジメントの問題

ハラスメントは、組織の管理・運営にも悪影響を及ぼします。ハラスメントがある職場では、社員のモチベーションが低下し、離職率の上昇や人材流出を招きます。

管理職がハラスメントの行為者であることが多く、被害者は声を上げにくいため、問題が長期化するリスクがあります。

ハラスメント対策の重要性

職場におけるハラスメントは、個々の人間関係や職場の雰囲気が悪化するだけでなく、企業経営を脅かすリスクとなりますので、未然に防止することが重要です。

企業のイメージ

企業は利益を追求するだけでなく、社員が安心して働ける環境を提供する社会的責任を負っています。ハラスメントが発生すると、企業のイメージが損なわれ、採用活動や取引先との関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

生産性への影響

ハラスメントが日常的に行われる職場環境では、人間関係が悪化し、社員のモチベーションや生産性が低下します。メンタルヘルス不調や退職する社員が増えると、企業の運営にも悪影響を及ぼします。

法的なリスク

ハラスメントに適切に対応しなかった場合、企業は訴訟リスクを抱える可能性があります。厚生労働省のガイドラインや労働基準法、男女雇用機会均等法などに基づき、企業にはハラスメントを防止するために対策を行う必要があります。

企業が講ずべき措置

職場におけるハラスメントは事業主に防止措置を講じることが義務付けられています。

職場におけるハラスメント対策の義務

  • 事業主の方針等の明確化および周知・啓発
  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるパワハラ・セクハラに関する事後の迅速かつ適切な対応
  • 上記の措置と併せて講ずべき措置

企業が取り組むハラスメント対策

企業にとっては、ハラスメントが発生しにくい環境を整備することが、安定した組織運営のために欠かせません。

具体的には、社内の周知を徹底し、ハラスメントに関するコンプライアンス教育を強化することが求められます。また、匿名で相談できる窓口を設けて、適切に運用することも重要です。

予防策の強化

  • 就業規則に明確なハラスメント防止規定を盛り込む
  • 全社員に向けて定期的な研修を実施する
  • 相談窓口を設置し、匿名でも相談可能な体制を整える

迅速な対応

  • ハラスメントの通報があった際には迅速に調査を開始する
  • 被害者・加害者双方のプライバシーに配慮しながら公正な判断を下す
  • 再発防止策を講じ、組織全体で共有する

企業風土の改善

  • 風通しの良い職場環境をつくる
  • 管理職のハラスメント意識を高め、模範的な行動を促す
  • 定期的に社員の意識調査・アンケートを実施して、職場環境をチェックする

ハラスメント対策における社労士の役割

社労士はハラスメントの問題が起きないよう就業環境を整備するとともに、問題が起きた場合に適切に対応できるルール作りを支援することができます。

就業規則の整備

ハラスメントを防止するためのルールや処分について明確にする支援をします。就業規則を見直したり、適切なルールを整備することで、ハラスメントの防止と対応が明確になり、問題た発生した場合にもルールに則って、適切に対応することができます。

研修や教育プログラムの実施

社員や管理職向けにハラスメント防止の研修を定期的に行うことも重要です。ハラスメントの定義や具体例、対処方法を伝えることで、職場全体の意識向上を図ります。

相談窓口の設置

企業内のハラスメント相談窓口の設置を支援し、適切な対応ができるようアドバイスします。また、外部相談窓口の運営を担当して、社員が社外に相談できる環境を提供することもできます。

トラブル発生時の対応

ハラスメントが発生した場合に、調査の実施や関係者のヒアリングをサポートします。事実関係を整理し、適切な処分や改善策を提案することで、問題を早期に解決できるよう導きます。

行政機関の対応

ハラスメント問題が行政機関に持ち込まれり、訴訟に発展した場合、企業が適切に対応できるようサポートします。適切な手続きや調整を行うことで、企業のリスクを最小限に抑えることができます。

まとめ

職場におけるハラスメントは、企業のイメージが悪化するだけでなく、社員のメンタル不調や退職など生産性にも直結する重大な問題です。社労士は、企業のハラスメント対策を多方面から支援することで、法的リスクの回避や職場環境の改善に貢献できます。

社労士の専門知識は、ハラスメント対策において積極的に活用できるでしょう。

参照:厚生労働省「職場におけるハラスメント防止のために」