人材業界で働いていると、「社会保険労務士の資格って必要?」と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。
人材業界には、営業、キャリアアドバイザー、コーディネーターなどの職種がありますが、どのポジションも資格が必須というわけではありません。
だからこそ資格を持っていると差がつくともいえます。
ここでは、人材業界での社労士資格の活かし方、資格取得のメリットを解説していきます。
社会保険労務士は人材業界で必要?
社会保険労務士は、労働・社会保険関連の法律の専門家です。主な仕事は、企業の労務管理や労働・社会保険の手続きの代行、就業規則の作成などです。
「人材紹介や派遣には、あまり関係なさそう」と感じるかもしれませんが、実は現場で直面する多くの問題に社労士の知識が深く関わっています。
- 「この雇用契約、法的に問題ない?」
- 「労働時間ってどう計算すべき?」
- 「育休明けスタッフへの対応、正しくできてる?」
こんな場面、日々の業務でありませんか?
社労士の知識があれば、こういった質問にも自信をもって答えられるようになります。
現場で活かせる社労士の専門性
人材ビジネスでは、求人広告事業、人材紹介事業、人材派遣事業、請負事業を主として採用関連業務の代行や人材育成の研修など多彩な事業を展開しています。
なかでも、次の事業は社労士の専門性を活かせる業務が多くあります。
- 人材派遣業
- 人材紹介業
- 業務委託・請負
- コンサルティング
これらの事業では、関係法令や労務管理の知識が求められる場面が多いので、社労士の専門知識を活用できます。
それぞれについて、具体的に説明していきますね。
人材派遣業(労働者派遣事業)
人材派遣業は、派遣会社が雇用したスタッフを、派遣先企業に一定期間派遣し、業務を行うビジネスです。
派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び、給与や社会保険は派遣会社が管理します。業務の指示や職場環境の管理は派遣先企業が行います。
社労士の知識は、派遣契約の適正管理や、労働者派遣法の遵守、派遣社員の労務管理などで活用できます。派遣社員の契約更新や労働条件の適正化、福利厚生の向上にも役立ちます。
人材紹介業(有料職業紹介事業)
人材紹介業は、求職者と企業をマッチングし、採用支援を行うサービスです。成功報酬型で報酬を受け取る形が一般的で、新卒・キャリア採用の両方に対応します。
求職者にはキャリアカウンセリングを行い、適切な企業を紹介し、企業には最適な人材を推薦します。
社労士の専門性は、労働契約の適正化や雇用条件のチェック、採用後の労務管理のアドバイスなどで活かせます。雇用契約の法的リスクを軽減して、コンプライアンス強化にも貢献できます。
業務委託・請負
業務委託は、企業が特定の業務を外部の専門会社に委託するアウトソーシングの一種です。
例えば、社内システム開発の外注や採用プロセスの一部を委任するなどがあり、コスト削減や業務効率化を目的とします。
社労士の専門性は、委託先企業との契約の適正化や、外部委託による労働問題の防止、労働環境の整備支援などで活かせます。
採用コンサルティング
採用コンサルティングは、企業の採用活動を支援するサービスで、採用戦略の立案や選考プロセスの最適化、採用ブランディングなどを行います。
社労士の知識を活かして、適正な雇用契約のアドバイス、労働環境の整備、採用基準の策定支援など、企業が人材を確保しやすくなるようサポートできます。また、採用後の労務リスクの軽減にも役立ちます。
労務管理のサポート
あらゆる人材業界の労務管理において、適切な就業環境を整備する支援ができます。
労務管理を適切に行うことで、企業のコンプライアンス向上や生産性の向上に貢献できます。社労士の専門知識が大きく活かされる業務です。
人材業界で社会保険労務士の資格を取得する5つのメリット
社労士の資格を取得することは、人材業界内でのキャリアアップや業務の幅を広げる上でメリットがあります。
メリット①
✓クライアントから一目置かれる
社労士の資格は、クライアント企業にとって安心材料になります。
人事担当者は、「社労士=労務のプロ」と見ていますので、信頼性が向上します。競争が激しい人材業界ですが、他社の担当者と差別化を図ることができます。
資格そのものが信頼の証になり、同じ提案でも受け取られ方が変わってくるでしょう。
メリット②
✓労務相談に適切に対応できる
人材ビジネスでは、労働法の理解が不可欠です。社労士の専門性を活かすことで、適切な契約の締結や労務対応ができるようになります。
「契約途中ですが、辞めたいのですが…」
「社会保険の適用ラインってどこから?」
労働に関する相談や質問に対して、正確な知識に基づいて自信をもって対応できるようになります。
メリット③
✓実務力がアップする
社労士の資格は、労働基準法や労働法、社会保険制度などの専門知識を体系的に学ぶことができ、業務上のミスやトラブルを防ぎます。
法改正にも対応しやすくなり、業務効率もアップするでしょう。
メリット④
✓付加価値を提供できる
社労士の知識を活かして、人材紹介や派遣契約に関して専門的な対応ができるようになります。企業にプラスαの提案もできることから、強みが増えます。
メリット⑤
✓キャリアの選択肢が広がる
社内でのキャリアアップや、他業界への転職、将来的な独立など、キャリアの選択肢が広がります。
例えば、管理職として労務管理を担当するポジションに就くことや、社労士事務所と連携した業務を担うことができます。
将来的に独立して、人材派遣会社や企業向けの労務コンサルタントとして活躍する道も考えられます。
社会保険労務士×キャリアコンサルタント
社労士は人事系のメジャー資格ですが、人材業界ではキャリアコンサルタントの資格を持っている人や目指す人が多いのではないでしょうか。
どちらも国家資格で一生ものですので、これから先のキャリア形成に役立ちます。
キャリアコンサルタントと社労士の組み合わせ
キャリアコンサルタントと社労士の資格を組み合わせることで、スペシャリストとしてのキャリアが開けます。
専門知識を活かしたキャリア支援
キャリアコンサルタントとしてのアドバイスに、社労士の知識を加えることで、労働法や社会保険制度を踏まえた的確なキャリア支援ができるようになります。
雇用契約の内容や労働条件についても法的な視点からアドバイスできるので、候補者は安心して転職活動を進められます。
業務の幅が広がる
両方の資格を組み合わせることで、企業と個人双方を支援できる総合的なキャリア支援を行うことができるようになります。
独立した場合には、企業向けには労務コンサルティングやハラスメント防止研修を提供し、個人向けにはキャリア相談を行うといった多角的なサービス展開ができます。
キャリアコンサルタントとのダブルライセンスについては、こちらの記事でご紹介します。

キャリア形成のポイント
資格取得後に専門性を活かしてキャリアを築くには、次のようなポイントがあります。
実務経験の積み重ねる
実際に労務管理やコンサルティングで活かすには、現場での経験が役立ちます。現場での経験を積むことで、より実践的なアドバイスができるようになります。
学びを継続する
資格を取ったら終わりではなく、最新の情報を常にキャッチアップすることが重要です。労働関連の法律は頻繁に改正されますので、継続して勉強していくことが求められます。
採用市場の動向を把握していることで、より適切なキャリアを提案することができます。
どの職種でも強みになる
「資格=実務に直結しない」と思うかもしれませんが、実際には現場で役立つ場面がかなり多いはずです。
営業なら提案の説得力が増し、キャリアアドバイザーなら登録者に安心感を与えられます。コーディネーターなら、派遣スタッフとの信頼関係構築にもつながります。
私は企業の人事担当として、人材業界のいろいろな職種の方とお仕事をした経験があります。
労働者派遣や有期雇用に関する法律は複雑ですし、労務リスクが多い業務ですので、「正しい知識を持っているか」、「安心して依頼できるか」ということはかなり大きなポイントでした。
人材業界では、信頼の証として社労士の資格が強みになるでしょう。
まとめ|人材ビジネス×社労士で信頼の証に!
人材業界で社労士資格を持つということは、専門知識の習得だけでなく、クライアントの信頼性アップ、キャリアの可能性を広げるといったメリットをもたらします。
「ちょっと気になるけど、何から始めたらいいかわからない」という人は、どんな勉強法があるのか、仕事と両立できるのか、こちらの記事で確認してみてください。
参考:厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、人材サービス産業協議会、日本人材派遣協会、日本人材紹介事業協会