社会保険労務士試験に合格したら、次に何をすればいいのでしょうか?
社労士試験に受かった人は、喜んだり、ほっとしたり、達成感に浸ったりとそれぞれの思いをかみしめていると思います。
では、合格してから何をすればいいかというと、将来的に独立開業したいという思いはあっても、具体的に何をすればいいのかまで、はっきりイメージできていない人は多いかもしれません。
ここでは、社労士試験に受かったら何をすればいいのか、合格してからの流れについて解説していきます。
社会保険労務士に合格したら次にすること
社労士試験に合格すれば、自動的に「社会保険労務士」の資格を取得できるわけではありません。
「社会保険労務士」の資格を取得するには、社労士会の社労士名簿に「登録」を申請することが必要になります。
「社会保険労務士」になるためには、試験合格後にすることが、大きく分けて3つあります。
- 登録要件を満たしている人
→社労士名簿の登録申請をする - 登録要件を満たしていない人
→実務経験を積む
→事務指定講習を修了する
①社会保険労務士の登録をする場合
社労士として活動するためには、全国社会保険労務士会連合会の社労士名簿に登録して、所在地の都道府県社会保険労務士会に入会する必要があります。
入会しなければ社会保険労務士を名乗って業務をすることができません。
また、登録するには、2年以上の実務経験(試験の前後不問)か事務指定講習を修了することが要件となっています。
登録申請に必要なもの
入会するのは、開業する事務所または勤務先か居住地の住所にある都道府県社会保険労務士会とされています。
- 社会保険労務士登録申請書
- 個人番号カード画面の写し等
- 社会保険労務士試験合格証書の写し
- 従事期間証明書または事務指定講習修了書の写し
- 住民票の写し
- 写真票(顔写真)
- 戸籍抄本等
登録申請の流れ
- 入会予定の社労士会に登録申請書を提出
- 都道府県社会保険労務士会:受付、審査
- 全国社会保険労務士会連合会:審査、社労士名簿・証票の作成
- 登録完了後2週間程度で証票を発行
登録費用
登録するには費用もかかります。費用は研修などに使われています。
- 登録免許税:30,000円
- 手数料:30,000円
- 入会金と年会費(入会する社会保険労務士会によって異なります)
最新の情報は入会予定の都道府県社会保険労務士会にご確認ください。
会員区分
会員の登録には、「開業会員」「勤務会員・その他等」の区分があります。
- 開業会員
事務所を開業する社会保険労務士としての登録になります。 - 勤務会員
勤務先で社会保険労務士の仕事をする登録です。 - その他等
社会保険労務士の実務は行わず講演や執筆活動で社労士を名乗って活動するための登録になります。
社労士の登録をしない場合については、こちらの記事でご紹介します。

②社労士登録に必要な実務経験を積む場合
社労士の登録を申請するには、2年以上の労働社会保険諸法令に関する実務経験が必要となります。
登録要件の実務経験となる「労働社会保険諸法令関係事務」には、次のような業務が含まれます。
- 雇用保険、健康保険、厚生年金保険の被保険者資格取得・喪失届に関する事務
- 健康保険、厚生年金保険の被保険者報酬月額算定基礎届・月額変更届に関する事務
- 雇用保険被保険者離職証明書の作成
- 労働保険の概算・確定保険料の申告・納付に関する事務
- 就業規則(変更)に関する事務
- 時間外労働・休日労働に関する協定届の作成
- 労働者名簿の調製
(全国社会保険労務士会連合会「従事期間証明書(様式)」より)
実務経験が2年以上に満たない場合には、連合会が実施する事務指定講習を修了すると同等以上の経験があると認められます。
事務指定講習は4ヵ月の通信課程ですので、2年の実務経験より短くて済みますが、登録や開業を急いでいない人であれば、実際に実務を経験してみることをおすすめします。
社労士事務所・社労士法人で経験を積む
社労士事務所や社労士法人は、実際に社労士業務を経験したい人や独立開業を目指してノウハウを身につけたい人におすすめの働き方です。
一般企業の人事総務部門であれば労働社会保険以外の業務も多いですし、労働社会保険の業務であっても企業の規模が大きくなればなるほど担当としてかかわるのは一部になります。
社労士事務所や法人であっても社労士業務の全般が経験できるわけではなく、配属によっては、ある特定の業務だけを担当することになる可能性はあるでしょう。
一般企業の人事総務で経験を積む
私もそうでしたが、もともと人事部門で働いていて社労士試験に合格する人は多いと思います。
試験に合格したことで何か変わるかといえば、変わらないことの方が多いのではないでしょうか。
希望すればより専門性を活かせる業務を任せてもらえるようになったり、配置で考慮されるかもしれません。
とはいっても、試験に合格したからといってすぐに優遇されたり、異動できるわけではないと思います。
登録に必要な実務経験となる業務がしたいのに、できそうにないということであれば、転職も選択肢になってくるでしょう。
実務経験となる業務がすぐにはできそうにない場合であっても、人事系の仕事をしているのであれば、社労士の知識を活かせる場面は増え、周囲の評価はアップすると思います。
人事や総務などではない職場や職種の人が登録要件となる実務経験を積みたい場合、例えば営業職や技術職からのキャリアチェンジを目指す人などは、社内で異動するか、できなければ転職ということになります。
その場合は未経験からのスタートになりますので、社労士試験の合格者ではあっても採用選考で有利になるとは限りません。
キャリア採用だけでなく、未経験OKや試験合格者を優遇するような求人を広く探すことをおすすめします。
いずれにしても、実務経験の要件を満たすために転職をするのであれば、労働・社会保険諸法令に関する業務ができるかどうかがポイントになります。
③事務指定講習を修了する場合
実務経験がなくても、事務指定講習を修了することで「2年以上の実務経験」に代わる資格要件を満たすことができます。
実務経験は足りないけれど、すぐに独立開業したいと考えている人や社労士の資格者として勤務したい人、転職先を探したい人などにおすすめです。
講習科目
- 労働基準法及び労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
- 年金裁定請求等の手続
講習内容
- 通信指導(4ヵ月間)
教材によって自己学習をして通信教育方式で添削指導が行われます。 - eラーニング講習(2ヵ月間)
講習科目について1科目3時間の動画学習が行われ、各科目について試験が行われます。
申込期間
11月
実施期間
翌年2月~
修了の認定
所定の要件を満たし、全課程を修了したと認められると修了証が発行されます。
- 通信指導を期間内に完了すること
- eラーニング講習は、各科目の動画学習を完了し、効果測定のための試験で良好な成績を収めること
問い合わせ
全国社会保険労務士会連合会
社労士の事務指定講習については、こちらの記事で詳しくご紹介します。

まとめ|社労士試験は合格して終わりじゃない!
社労士試験の合格後は、要件を満たして、「登録」すると「社会保険労務士」として活動できるようになります。
「勤務」社労士であれば、社労士事務所や企業の人事総務などで実務経験を積みながら、ステップアップしたり、将来的な独立に備えたりすることができます。
「開業」社労士であれば、自ら事務所を運営して、社労士業務を行うことになります。
どのようなキャリアを築きたいか、それぞれの人に希望があると思います。
すぐにすべてが希望通りにはならなくても、新しい一歩を踏み出して、やりがいを感じて仕事ができるようになることを願います。
社労士におすすめの転職エージェントについては、こちらの記事でご紹介します。

参照:全国社会保険労務士会連合会ウェブサイト