社会保険労務士は、独立開業を目指す人も多い国家資格ですが、集客が大きな課題となります。
私も開業したときには、社労士の業務ではなく、社労士の業務をするための集客方法をいろいろ試しました。
そのときに感じたことは、当然ではあるのですが、士業に限らず事業を行うということは、集客・営業力が重要なのだということです。
社労士は労務管理の専門家ですし、資格を目指す人も会社員が多いので、集客の経験がないというより、あまり深く考えたことがないという人も多いのではないでしょうか。
ここでは、開業社労士が集客するための具体的な方法についてご紹介します。
社会保険労務士の集客とは?
社労士事務所を開業したときに、既に仕事が決まっているという人は少なく、まず取り掛かるのは、集客・営業活動でしょう。
開業した社労士の多くが最初に直面する壁――それが「集客の難しさ」です。
専門的な知識や資格を持っていても、実際に仕事につながる依頼を得るのは簡単ではありません。
まずは、なぜ社労士が集客に苦戦しやすいのか、主な理由を整理してみましょう。
社労士が集客に苦戦する理由
社労士は集客に苦戦することが多いといわれますが、その理由としては次のようなことが考えられます。
理由①
✓メリットがわかりにくい
社労士の業務は、労務管理や社会保険手続き、就業規則の作成、助成金の申請支援など多岐にわたります。
こうした業務は企業の経営者にとって重要なことではありますが、一般的にはわかりづらく、「何をしてくれる人なのか」が伝わらないということがあります。
「就業規則の見直し」と聞いても、何のメリットがあるのかわからない人は多いでしょう。その結果、サービスの価値を理解してもらえず集客につながらないケースがあります。
理由②
✓資格があまり知られていない
いわゆる「士業」といえば、弁護士や税理士はよく知られていますが、他の士業は業務領域までは区別がつきにくいものです。
「会社設立後の手続き」や「助成金」などを、とりあえず顧問税理士に任せるというケースも少なくありません。
社労士としての独自性や専門性を明確に打ち出せないと、選ばれる理由が伝わらないまま埋もれてしまう可能性があります。
理由③
✓営業が苦手な人が多い
開業した時点では「実務には強いが営業経験はゼロ」という人も少なくありません。
資格を取れば普通に仕事ができると思っていたのに、実際は何をすればいいのかわからない、ということになるケースも。WEB集客に苦手意識を持つ人も少なくありません。
誰に向けてのサービスなのか?
社労士の場合、基本的に「中小企業の経営者・人事担当」がターゲットになるでしょう。
前職の経験や人脈によって、業種などを特定してターゲットを差別化できると有利ですが、多くの場合、活動していくなかで明確になっていく部分もあります。
まずは、お問い合わせなど声のかかった顧客との関係を構築していくことが優先されます。
中小企業向け
多くの社労士がターゲットとするのは中小企業です。労務管理に課題を抱えている企業や、人事制度を整備する必要性のある企業に対して、積極的にアプローチできます。
特定の業種に特化
建設業、IT業、派遣業、介護施設、医療機関など、特定の業種に特化できると、専門性が高まり差別化が図れます。
個人向け
社労士の業務は企業向けだけでなく、年金相談や労働トラブルのアドバイスなど個人向けのサービスにも対応できます。
特定社会保険労務士やファイナンシャルプランナーの資格を取得すると、対応できる個人向け業務の領域が広がります。
社会保険労務士の開業直後からできる集客方法
開業したばかりのときは、いろいろな活動を試しやすく、声をかけてくれる人も多くいます。この時期に自分に合った集客方法を見極めていくことをおすすめします。
社労士事務所を開業するまで、クライアントや取引先との業務を経験したことがないという人もいると思います。
まずは、次のような集客方法は全て取り組むつもりでスタートしてみてください。
- 事務所のホームページ作成
- 関係メディアに事務所サイトのリンク掲載
- 検索エンジンの最適化(SEO対策)
- ネット広告の出稿
- 異文化交流会への参加
- セミナー・勉強会の開催
- 知人や既存顧客からの紹介
- 地域密着型の活動
- 実績の紹介
- 他士業との連携
それぞれ順番に説明していきますね。
①事務所のホームページを作成する
やはり、いまはインターネットを活用した集客は欠かせません。効果的に運用するのは簡単ではありませんが、なくてはならないものになっています。
まずは、社労士事務所の信頼性を高めるために、ホームページは必須です。
次のようなポイントを押さえて作成しましょう。
- 事務所の対応可能な業務をわかりやすく記載する
- 専門用語は使わず、顧客にメリットが伝わるように工夫する
- お問い合わせフォームを設置する
②関係メディアに事務所サイトのリンクを掲載する
所属の社労士会や業界紙、関係団体、企業などが運営するWebサイトで社労士や専門家を紹介するページを設けていることがあります。
ここに自分の事務所のURLを掲載することで集客に効果があります。
開業したばかりの頃は、実績がなく、事務所サイトの集客力も弱いので、私は関係メディアを経由してお問い合わせをいただくことも多かったです。
そのためにも、事務所のホームページはしっかり作成しておく必要があります。
③SEO対策をする
ホームページを作成しただけでは、検索エンジンで上位に表示されません。
SEO(検索エンジン最適化)対策を行い、検索結果の上位に表示されるように工夫しましょう。
- キーワードを盛り込む(例「社会保険労務士+地域名」など)
- ブログを定期的に更新する
- 専門性の高い記事を作成する
④ネット広告を出稿する
SEO対策だけで検索上位に表示されるのが難しくなっている地域や業務も多いと思います。
その場合は、予算に応じて広告を出すことも選択肢の一つです。
- 広告メディアの選定
- 広告キャンペーンの設計
- 予選・スケジュールの設定
- 広告審査・配信開始
⑤異業種交流会へ参加する
ネット集客の存在が大きいのはもちろんですが、オフラインの集客も依然として効果があります。こちらの方が得意という人は、むしろ積極的に進めた方がよいと思います。
異業種交流会やビジネスイベントに参加して人脈を広げます。経営者や人事担当者、他士業とつながることで、ビジネスチャンスを増やせます。
- 企業団体や商工会のイベントに参加する
- 経営者向けの勉強会やワークショップに積極的に参加する
⑥セミナー・勉強会を開催する
社労士の専門知識を活かして、セミナーや勉強会を開催することで、潜在的顧客と直接会うことができます。
未経験では難しいだろうと思った人もいるのではないでしょうか。
確かに1人で開催するのはハードルが高いのですが、共同で行うチャンスは探せばそれなりにあります。
- 地域の商工会議所と連携する
- 企業向けの無料セミナーを開催する
- オンラインセミナーを活用する
- 法改正に関する最新情報を提供する勉強会を行う
- 他士業との共同セミナーで相乗効果を狙う
⑦知人や既存顧客から紹介してもらう
知人やクライアントから新規顧客を紹介してもらうのも有効です。
経営者や担当者を紹介してくださることはあると思いますので、そこから契約につなげるスキルは磨く必要があります。
- 顧客満足度を高め、紹介を促進する
- 顧客との関係を深めるため、定期的なフォローアップを実施する
⑧地域密着型の活動をする
地域の企業や個人に認知してもらうために、地元に根付いた活動を行います。
- 所属する社労士会の行事に参加する
- 地域のイベントに協賛・参加する
- 地域情報誌に広告を掲載する
- 地元の企業や団体とパートナーシップを築く
地域の企業を直接訪問するのも集客方法の一つです。効果的に行えるかどうかは地域や営業経験によっても差が出るとは思います。
- 地域の中小企業をリストアップし、訪問する
- 初回無料相談を提供し、顧客の課題をサポートする
- 定期的に訪問し、関係を継続的に構築する
⑨プロフィールや実績を紹介する
顧客は抱えている課題や問題を解決してもらえそうだと思えれば、その事務所に依頼します。
大きな広告費をかけなくても、ここなら大丈夫だと感じてもらえるような工夫をしましょう。
事務所のホームページに、代表者のプロフィールや実績・事例などを掲載すると、信頼性が向上します。開業直後はこれまでの経歴を中心に信頼性を伝える工夫をします。
また、初回無料相談を行うことで、相談のハードルを下げることができます。
⑩他の専門家と連携する
業務の幅を広げたり、大きな案件の受注につなげたい人は、戦略的な集客に挑戦してみてください。
他士業などとの連携は、社労士にとって大きな強みとなります。連携することで相互に顧客を紹介し合うこともでき、サービスの幅が広がります。
税理士との連携
税理士は企業の財務・会計を担当していますので、労務管理のニーズが発生するケースもあります。
- 給与計算と税務処理をセットで提供
- ワンストップサービスを展開
- 適切な労務管理のアドバイスを実施
行政書士との連携
行政書士は企業の許認可申請を担当しているため、社労士と連携しやすい士業の一つです。
- 建設業許可申請と労務管理の一括対応
- 在留資格申請と外国人雇用管理のサポート
- 契約書作成と労務トラブル防止策の提供
弁護士との連携
労務トラブルや法的な紛争に発展するケースでは、弁護士との連携が不可欠です。
- 解雇や労働紛争の適切な対応
- 労働訴訟のサポート
中小企業診断士との連携
経営改善や組織改革をサポートする中小企業診断士との連携も有効です。
- 人事評価制度の策定
- 業務効率化・生産性向上のアドバイス
- 企業の成長戦略に基づく労務サポート
キャリアコンサルタントとの連携
社員の研修やキャリア支援において、キャリアコンサルタントと協力することもできます。
- メンタルヘルス対策のアドバイス
- キャリアプランニングと研修プログラムの提供
他士業との連携を強化することで、社労士の業務範囲が広がり、集客力の向上につながります。
また、自らダブルライセンスを目指すことも安定した事業運営に役立ちます。
社労士のダブルライセンスについては、「社会保険労務士のダブルライセンスにおすすめの資格5選」の記事でご紹介します。
集客を強化するには?
社労士としてのブランディングを強化することは、集客に大きく貢献します。
専門性を打ち出すことで、他の社労士との差別化を図ります。同業・他士業の事務所や勉強会関係でチャンスがあれば強力な集客ツールになります。
ブランディングができていけば、直接依頼が入ることも出てくるでしょう。
- 書籍の執筆
- 専門メディアでの執筆
- メディア出演
まとめ|社労士の集客はWebもオフラインも重要!
社労士の集客には、オンラインとオフラインの両面を活用することが重要です。とはいっても、得意不得意があると思いますので、自分に合った方法で強化していくことをおすすめします。
やはり最初が肝心で、いろいろ試してみて、効果を出せる方法を知ることが重要です。
同じ社労士でゼロからのスタートだとしても、地域や強みなどがそれぞれに違いますので、同じ方法で同じ効果が得られるわけではありません。
ホームページや広告を活用しながら、複数の方法を組み合わせて実践しましょう。安定した集客の参考になれば幸いです。