社会保険労務士は開業しても厳しい――。
「社労士は食べていけない」
「社会保険労務士なんて取っても意味ない」
そんな風に言われたら、社労士を目指そうか迷っている人やすでに勉強中の人は不安になりますよね。
私は開業するか迷っていたときに、「社労士なんて食べていけないよ」とたまたまお会いした某省の職員の方に言われて、ショックを受けた経験があります。
また、開業されている社労士の方にお話を伺ったときには、開業してもすぐに廃業して会社員に戻っていく人もいるということをお聞きしました。
社労士に興味を持った人や独立を考えている人のなかには、漠然とした不安や懸念を持つ人もいると思います。
ここでは、社労士の開業にありがちな失敗のパターンと、その対策を解説していきます。
開業社労士が直面する失敗とは?
社労士は事務所を開業しただけでは仕事を獲得できません。事務所運営には経営視点が必要です。
ビジネス感覚や営業力がなければ、開業しても壁にぶつかってしまうのが現実です。
「社労士は食べていけない」と言われたときはショックでしたが、冷静に振り返ってみると、そう言われる理由がわかってきたように思います。
社労士の開業で、よくある失敗と成功する人の違いをご紹介していきますね。
失敗パターン①|営業を軽く見た
社労士の資格を取れば自然と仕事が舞い込む、とまでは思っていないでしょうが、開業直後に最も多い失敗が、「営業をしない」ことです。
- 「ホームページを作れば、そのうち問い合わせが来るだろう」
- 「紹介で十分に仕事が回るはず」
と楽観視していると、あっという間に資金が底をついてしまいます。
特に開業1年目は、待ちの姿勢ではなく、自ら動くことが重要です。異業種交流会に参加したり、地元企業へのアプローチを積極的に行うなど、具体的な行動が欠かせません。
開業直後は、営業活動が仕事です。成功する社労士は、日常の業務に営業を落とし込んでいます。
- 毎週3件、新規の企業へアプローチする
- 毎月1回、異業種交流会に参加する
など、具体的な行動目標を設定して、必ず実行します。
失敗パターン②|業務を広げすぎた
開業時は、何でもできると幅広くアピールしがちですが、実はこれも失敗のもと。企業側から見ると、逆に選びづらいのです。
- 特定の業種や職種の労務管理に特化
- 労務相談&就業規則の作成
- 労働問題・トラブル解決に強い
など、わかりやすい強みや専門性があると、選ばれやすくなります。
専門領域を明確にして、自ら選ばれる理由を作っています。
- ITベンチャー向けの労務管理に特化
- 飲食業の助成金申請サポート
- メンタルヘルス対策と労務コンサルティング
など、「この事務所に頼みたい」と思わせる強みを打ち出します。
失敗パターン③|料金設定に失敗した
「最初だから安くしてでも契約を取りたい」と、価格競争に巻き込まれるのも失敗パターンのひとつです。
確かに料金設定は難しくて、なかなか適正価格を見つけられない人も多いと思います。
価格設定は、
- 提供する価値
- 競合の状況
- 自分の生活費・事業費
などを考慮して設定しましょう。
「安いから選ばれる」のではなく、「頼れるから選ばれる」存在を目指すことが重要です。
「サービスの価値」に見合った料金設定を行っています。
- なぜこの料金なのか
- どんな価値を提供できるのか
など、具体的に説明して、価格ではなく信頼で契約を取ります。
失敗パターン④|ビジネス感覚が弱かった
「士業=先生業」という意識で、ビジネス感覚が弱いと失敗しやすくなります。社労士もサービス業です。
- キャッシュフロー管理
- 費用対効果の計算
- タスク管理・スケジューリング
これらができていないと、どんなにスキルがあっても事業が回りません。「事務所の運営者」の視点を持つことが重要です。
経営視点を持って行動しています。
- 数字に強くなる努力をする
- 月次の売上・利益を把握する
などを行い、必要なら経費削減や集客強化の戦略を練り直します。
失敗パターン⑤|情報収集ができなかった
独立後は、すべての意思決定を自分で行う必要があります。
孤立してしまうと、正しい判断ができず、失敗パターンに進みやすくなります。
外部との交流や情報を得る場を意識的に作っています。
- 士業交流会やオンラインサロンへの参加
- 成功している社労士の勉強会への参加
- 経営コンサルタントや先輩士業への相談
など、人脈をビジネスに活かします。
失敗する社労士のタイプ・共通点
失敗する社労士と成功する社労士には、大きく次のような違いがあります。
失敗する社労士 | 成功する社労士 |
---|---|
営業活動をなかなかしない | 営業を日常のルーティンにしている |
ターゲットを絞らない | 専門領域を打ち出している |
価格設定で消耗する | 価値に見合った価格提示をする |
経営を意識しない | 経営視点で事業を考える |
孤立して一人で悩む | 情報収集する環境を整える |
タイプ別|失敗のパターン
失敗するパターンには、陥りやすいタイプがあります。
「自分かも?」と感じたら、あらかじめ対策を考えておきましょう。
タイプ | 特徴 | よくある失敗 |
---|---|---|
慎重すぎるタイプ | 完璧を目指すあまり動きが遅い | 準備だけで時間が過ぎて、チャンスを逃す |
無計画タイプ | なんとなく勢いで独立してしまう | 収益の計画がなく、資金が足りなくなる |
自信過剰タイプ | 営業しなくても顧客が来ると思っている | 仕事が獲得できず焦る |
内向きタイプ | 人との接触を避けがち | 営業や情報収集ができず孤立する |
✅慎重すぎるタイプの診断
項目 | チェック |
---|---|
完璧に準備が整うまで動きたくない | □ |
「まだ早い」と思って行動を後回しにしがち | □ |
情報収集に時間をかけすぎてしまう | □ |
ミスを極端に恐れる | □ |
✅無計画タイプの診断
項目 | チェック |
---|---|
独立後の収支シミュレーションをしていない | □ |
とりあえず「開業すればなんとかなる」と思っている | □ |
顧客獲得の具体的な戦略がない | □ |
サービス内容や料金表が決まっていない | □ |
✅自信過剰タイプの診断
項目 | チェック |
---|---|
「自分ならすぐに仕事が入る」と思っている | □ |
営業しなくても紹介が来ると期待している | □ |
ホームページを用意していない | □ |
顧客ニーズより自分の考えを優先しがち | □ |
✅内向きタイプの診断
項目 | チェック |
---|---|
人付き合いやネットワークづくりが苦手 | □ |
1人で仕事を完結させたいと思っている | □ |
異業種交流会や勉強会に参加したことがない | □ |
顧客や他士業との連携に抵抗を感じる | □ |
自分の傾向を知っておくだけで、行動パターンは変えられます。
当てはまる項目が多かったタイプのパターンに陥らないために、具体的に行動することをおすすめします。
タイプ別|おすすめの改善策
チェックリストで自分の傾向がわかったら、次は行動の見直しです。タイプ別におすすめのアクションを紹介します。
慎重すぎるタイプ
改善ポイント | アクション例 |
---|---|
完璧主義を捨てる | 「情報収集は2日で終わらせる」と期限を決める |
最初の一歩を早く踏み出す | SNS発信・無料相談会など、できることから始める |
成功体験を積み重ねる | 1件ずつ面談アポ獲得を目標にする |
完璧主義ではなく、「60点」でやってみる習慣にしよう!
無計画タイプ
改善ポイント | アクション例 |
---|---|
売上目標の設定 | 月の最低/理想の2本立てで設定する |
収支シミュレーション | 固定費・必要売上・契約単価を算出する |
顧客獲得の流れを描く | 「知られる→信頼→問い合わせ」まで設計する |
「とりあえずやってみる」から「戦略を持って動く」にシフトしよう!
自信過剰タイプ
改善ポイント | アクション例 |
---|---|
顧客視点で考える | 顧客の課題・ニーズをヒアリング重視で掴む |
営業導線を整える | サービス紹介資料/HP/実績紹介を用意する |
地道な営業活動の習慣化 | 毎週〇件の営業行動を設定する |
営業力を鍛えて習慣化しよう!
内向的タイプ
改善ポイント | アクション例 |
---|---|
人と会う機会をつくる | 勉強会や異業種交流会に月1回参加する習慣づけ |
士業ネットワークを活用 | 税理士・行政書士などと横のつながりを作る |
オンラインでも交流を | SNSでの情報発信や共感を通じて信頼構築をはかる |
「人脈」は「情報と信頼の源」と考えよう!
まとめ|社労士開業の失敗パターンから脱却しよう!
社労士事務所を開業して、「うまくいってないな」という人は、失敗パターンのどれかが思い当たるはずです。
失敗パターンを知っておけば、リスクを減らして、事務所の運営を軌道に乗せられる可能性が高くなります。
これから社労士を目指す人も、すでに開業している人も、陥りやすいパターンを知って対策する参考になれば幸いです。
社労士の独立については、こちらの記事でご紹介します。

参考:厚生労働省、全国社会保険労務士会連合会