「社会保険労務士なんて取っても意味ない」
「社労士は食べていけない」
そんな風に言われたら、社労士を目指そうか迷っている人やすでに勉強中の人は不安になりますよね。
私は開業するか迷っていたときに、「社労士なんて食べていけないよ」と勉強会か交流会でお会いした某省の職員の方に言われて、ショックを受けた経験があります。
また開業されている社労士の方にお話を伺ったときには、開業してもすぐに廃業して会社員に戻っていく人もいるということをお聞きしました。
そのときはよくわからなかったので、ショックだったり驚いたりしたのですが、冷静になって振り返ってみると、社労士を取っても意味がないとか食べていけないなどと言われる理由がわかってきたように思います。
ここでは、人事部勤務から社労士になった資格者の本音をご紹介します。
社会保険労務士の資格
社労士は社会保険労務士法に基づいた国家資格者で、社会保険労務士の主な業務は以下のとおりとされています。
- 労働社会保険手続き業務
- 労働管理の相談指導業務
- 年金相談業務
- 紛争解決手続代理業務
- 補佐人の業務
(「全国社会保険労務士会連合会」より)
社労士は意味がない?
社労士は人事労務管理の専門家であり、独立開業することができる資格です。独占業務である各種申請の代行や労働社会保険などの手続きはデジタル化が進み、人手が必要な場面が増えるということはないでしょう。
一方で、相談業務などコンサルティング領域のニーズは増えていくと思われますが、社労士の資格がないとできない業務ではありません。
そういった点だけを見れば、社労士の資格を取る意味はやっぱりないのかな?と感じるかもしれません。お金と時間をかけて、役に立たない資格を目指したくはないですよね。
実は社労士の資格が役立つ人もいれば、取ってもあまり意味がない人もいるのです。
社労士の資格が役に立つ人
社労士の資格を活かせるのは、次のような人たちです。
人事労務・総務系の部門で働いている人
人事部勤務だった私は転職を考えたときに手ぶらで辞めるわけにもいかないと考え、関連した資格として社労士を選びました。人事系の仕事はいろいろな業務経験があってもなかなか実績として転職でアピールするのは難しいですよね。
業務上、一人で何かを達成するということはほぼないですし、数字として出せる成果として社内では評価されても、対外的に認められるようなものは、ある程度の役職に就くまであまりないと思います。
というわけで、社労士の資格を目指すことにした私はかなり集中して取り組んだので、勉強をはじめてから1年半、1回目の受験で社労士試験に合格することができました。
では、合格後どうしたかというと、合格した達成感と周囲の評価がアップしたこと、辞めたかった主な理由が解消したことで、仕事のモチベーションが上がり、結果として転職は見送ることにしました。当初の目的とは違ってしまいましたが、資格を取得したことはすごく意味があったと思っています。
一方で、学歴に自信があり、実務経験も十分で社内での評価にも満足している人にとっては、社労士の資格は取っても意味がないと感じるかもしれません。
転職・就職を有利に進めたい人
社労士の知名度は一般的にはあまり高くないかもしれませんが、人事労務系ではメジャー資格です。学歴や実務経験にあまり自信がない人でも転職や就職で労働社会保険の基礎知識があることのアピールとして社労士の資格は有効です。
実際に人事系組織の転職組には社労士の資格を持っている人が多いです。社会人経験がない人やキャリアチェンジを目指す人、非正規社員から正社員を目指す人などにとっても、一目置かれる資格になることは間違いありません。
有利になるのは人事労務・総務部門や人事コンサル・人材サービス業界、法律・社労士事務所などや「人」と関係する業務に就く場合であって、それ以外ではあまりアピール材料とならないのは言うまでもありません。
社内で職種変更したい人
技術系から事務系、外勤から内勤など、仕事を続けていると何等かの事情で職種を変更したい、あるいは変更せざるを得ないことが少なくありません。こういった職種変更は、本人にも受け入れる側にもリスクがあります。それぞれの不安を解消することに社労士の資格が役立ちます。
「人事労務系の仕事をしてみたいけれど、向いているかどうかわからない」という人にとって、社労士の勉強をして面白かったり、スムーズに進められるようでであればチャレンジしてみる価値があるといえるでしょう。
受け入れる側にとっても社労士の資格を持っている人であれば、任せられる業務をイメージしやすくなります。
独立したい人
社労士は独立開業ができる国家資格です。会社を辞めて自分で仕事をしてみたいという人におすすめです。定年がなく、自分のキャリアを自由に描くことができます。
ただし、資格を取得して開業さえすれば仕事ができるようになるわけではなく、仕事を取ってくる必要があります。経験上、開業初期には人事経験や資格より事業計画や営業ノウハウの方が必要だと感じました。
「社労士は食べていけない」と言われたり、廃業の不安があるのも独立した場合のことで、社労士を開業する人に仕事を獲得できない人が多い?ということなのかもしれません。
社労士には人事系など管理部門で仕事をしてきた人も多いと思いますが、知識やスキルがあっても独立したら仕事を取ってこないことには仕事ができないのです。そして開業初期には仕事を獲得することが仕事になるということです。
ダブルライセンスを目指す人
すでに資格を持っている人は、社労士の資格をプラスして専門領域を広げることができます。中小企業診断士や行政書士、ファイナンシャルプランナーとのダブルライセンスは独立開業する際に業務領域を広げることができますのでおすすめです。仕事を獲得しやすくなります。
中小企業診断士とのダブルライセンスについてはこちらの記事でご紹介します。

人事系ではキャリアコンサルタントや衛生管理者の資格も人気ですが、社労士の資格を取得することで、さらにスキルを強化して、ステップアップを目指すことができます。フリーランスとして独立に活かすこともできるでしょう。
キャリアコンサルタントとのダブルライセンスについてはこちらの記事でご紹介します。

社労士の収入
社労士の収入は働き方によって変わってきます。個人差も大きいと思います。
勤務社労士の場合
企業内社労士として働く場合の年収は一般企業の年収と同程度です。一般社員であれば400万円~600万円程度のことが多いでしょう。
グローバル企業や外資系企業ではもう少し高かったり、社労士事務所などでは規模により若干低くなる可能性があります。
独立開業した場合
「社労士は食べていけない」という不安は独立開業する場合のことで、独立開業した場合は顧客数によって収入が大きく変動します。
食べていけないレベルから1000万円以上稼ぐ人もいるでしょう。独立開業した事務所が大きくなって、多くの有資格者が所属するような社労士法人の代表は経営的にも成功している例といえます。
まとめ
いかがでしょうか。ご自身のキャリアに社労士は役立ちそうでしょうか?
仕事をしながら勉強するのは簡単なことではありませんが、社労士を目指すと決めたら、集中して勉強することをおすすめします。法改正や白書からの出題は常に新しい情報への更新が必要になりますので、勉強する期間が長くなればなるほど負担が増えます。
私は平日に仕事が終わってから2時間程度、週末には集中力が続く限りできるだけ勉強しました。勤務先には資格勉強中であることは言ってませんでしたので、残業や飲み会など勤務時間外の拘束時間も短くはなかったです。今思えば、「絶対辞めてやる!」という強い気持ちが原動力になっていたように思います。
資格を目指す人の事情や目的はそれぞれ違うでしょうし、私の経験がどのくらいお役に立つかはわからないのですが、社労士を目指す人の何か参考になれば幸いです。
①社労士試験の内容を知ろう
②社労士試験一発合格の計画を立てよう
③社労士試験の勉強方法:学習スタイル
④社労士試験の勉強時間:最短合格に
⑤社労士試験の独学:おすすめテキスト
⑥社労士試験の通信講座を見つけよう
⑦社労士試験の通学スクールを選ぼう
⑧社労士試験勉強のコツ:労働関係科目編
⑨社労士試験勉強のコツ:社会保険科目編
⑩社労士試験直前期には模試を受けよう
参考:厚生労働省、全国社会保険労務士会連合会