社員研修やセミナーの講師は、専門知識を活かして、企業の成長や社員に直接貢献することができます。大きなやりがいがあり、社員研修・セミナー講師になりたい人は多いでしょう。
また、社労士にとっては、新たなクライアントを獲得できる可能性があり、集客に有利な仕事でもあります。
ここでは、社労士が社員研修・セミナー講師になるためのステップ、必要なスキル、成功するためのポイントについてご紹介します。
社員研修・セミナー講師の仕事
社労士のなかで人事経験のある人は、人前で話す機会がそれなりにあったと思いますし、研修を担当したことがある人は、社員研修・セミナー講師に積極的な人が多いかもしれません。
講師は得意分野についての依頼を受けることもありますが、実際は、企業がやりたいテーマに需要があります。
人事部が行う社員研修や説明会も、スキルアップや規則・制度の変更など、企業として実施する必要のあるものが中心です。
ですから、研修やセミナーが上手な講師は、特定の分野でなくても、さまざまなテーマで継続して依頼を受けられるということになります。
社員研修・セミナー講師の役割とは?
社労士が行う社員研修やセミナーの講師は、受講した人が実務で活かせる知識やスキルを伝えることにあります。
講師の役割
- 知識の提供
法律・労務管理・人事制度・職場環境改善などの専門知識を伝える。 - 実践的なスキルの指導
労務管理の実務や人材育成の方法について具体的なノウハウを提供する。 - 受講者の理解促進
わかりやすく説明し、受講者の疑問や課題に対応する。 - モチベーション向上
学ぶ意欲を高め、実務で活かせるように支援する。
社員研修・セミナーのニーズを理解する
企業が社員研修やセミナーを実施するには目的があります。研修やセミナーを行う企業のニーズを把握することが重要です。
社員研修・セミナーの目的
- 法改正への対応
例:長時間労働の是正、人事制度の変更など - 労務管理の強化
例:賃金体系の変更、人事評価制度の導入など - 社員のスキルアップ
例:ハラスメント対策研修、メンタルヘルス研修、コミュニケーション研修など
専門分野を準備する
社労士にはさまざまな業務領域がありますが、まずは需要のあるテーマで自信を持ってできる分野について、しっかり準備することが重要です。
「この社労士に依頼すれば、効果的な研修が受けられる」 と思われれば、別のテーマでも依頼される可能性が高まるでしょう。
主なテーマ
- 労務コンプライアンス研修
労働・社会保険に関する法律や制度の基礎知識 - ハラスメント防止研修
パワハラ・セクハラ・マタハラ - メンタルヘルス対策研修
ストレスチェック、休職・復職支援 - 人事評価・賃金制度研修
公正な評価制度の構築、賃金制度の設計 - 労働時間管理研修
残業削減対策、勤怠管理の適正化
社員研修・セミナー講師に求められるスキル
研修やセミナーを受けたことがある人なら誰でも、講師のスキルが受講後の満足度に大きく影響することは経験済みだと思います。
自分でもわかりやすい思えるように、スキルを磨く必要があります。
コミュニケーション能力
受講者の関心を引きつけ、質問に的確に答える力が必要です。話し方だけでなく、ボディランゲージやアイコンタクトも意識すると良いでしょう。
ファシリテーションスキル
単なる一方的な講義ではなく、受講者の意見を引き出し、参加型の研修を行うことで、理解度が向上します。ディスカッションやワークショップを取り入れるのも有効です。
実務に活かせる指導力
単なる知識の伝達ではなく、受講者が「自社でどう活用できるか」を考えられるように導く力が重要です。ケーススタディやロールプレイを活用すると、実践的な学びにつながります。
最新情報のキャッチアップ力
労働関連の法改正や人事制度のトレンドは常に変化するため、最新情報を収集し、研修内容をアップデートすることが求められます。
社員研修・セミナー講師になるためのステップ
社労士が社員研修・セミナー講師の依頼を受けるためには、 「ニーズの把握」「専門性の確立」「実績作り」「PR戦略」「人脈作り」「研修の質向上」 のステップが重要です。
専門知識・実務経験の整理
まずは、自分が講師として提供できる専門知識や経験を整理しましょう。社労士であれば、「労働基準法」「社会保険制度」「ハラスメント対策」などの法律関係に強みがあります。
研修テーマの選定
ターゲットとする受講者(経営者・人事担当・一般社員など)に応じて、適切な研修テーマを決めます。
- 社労士向け
「企業の労務リスクと対応策」「最新の法改正と実務対応」 - 人事向け
「評価制度の導入と運用」「エンゲージメント向上のための人事施策」 - 一般社員向け
「ハラスメント対策研修」「メンタルヘルス対策」
プレゼンテーションスキルの習得
講師を続けるには、わかりやすく伝えるスキルが不可欠です。研修講師向けのトレーニングや、他の講師のセミナーを見学することで、話し方のスキルを磨くのも効果的です。
- ロジカルな構成:話の流れを整理し、受講者が理解しやすい形にする
- わかりやすい話し方:専門用語をかみ砕いて説明し、具体例を交える
- スライドや資料の活用:視覚的に伝える工夫をする
研修の実績を積む
実績を積むために、研修やセミナーをやってみましょう。セミナーのニーズは結構あるものです。私も知人からの依頼はそれなりにありました。
実績が増えると、企業からの依頼が来るようになり、活動の幅が広がります。
- 知人の企業で研修を実施する
- 知人の士業やコンサルタントと合同セミナーを実施する
- 専門団体や公的機関のセミナーに登壇する
無料セミナーや自主開催
研修やセミナーの依頼を受けることが難しければ、自主開催も選択肢のひとつです。まずは、実績作りから始めることをおすすめします。
オンラインセミナーを活用する
ZoomやYouTubeなどを活用して オンラインセミナーを自主開催する方法があります。SNSで告知して、参加者を募ることで認知度を上げられます。
企業向けの無料研修を実施
興味を持ってくれそうな企業に 「初回無料で研修を実施します」 と提案し、実績を作るのも一つの方法です。
研修・セミナー講師の活躍の場
社労士が研修・セミナー講師として活動できる場はいろいろあります。対面研修だけでなくオンライン研修のニーズもありますので、チャンスが増えています。
企業内研修
企業内研修とは、特定の企業が自社の社員向けに実施する研修です。自社の労務管理や人材育成に直結する内容で行います。
例えば、「ハラスメント防止研修」「メンタルヘルス研修」「人事評価の適正運用」といったテーマがよく求められます。
また、企業ごとの課題に応じたカスタマイズができますので、受講者の実務に直結した研修を提供できます。
商工会議所・経済団体・専門機関などのセミナー
商工会議所や経済団体、各種業界団体などでは、企業の経営者や人事担当者向けにセミナーを開催することが多く、社労士が講師として登壇する機会があります。
このような外部セミナーでは、専門家としての知見を広めるだけでなく、他社の人事担当者や経営者とのネットワークを築く機会にもなります。
- 商工会議所のセミナー
「働き方改革と企業の対応策」「助成金を活用した人材育成」 - 業界団体の研修
「建設業における労務管理のポイント」「医療業界の人事労務トラブル対策」
研修会社やコンサルティング会社との提携
研修会社やコンサルティング会社と提携し、講師として登録することで、企業からの依頼を受けて研修を行うことができます。
大手研修会社では「人事労務」「コンプライアンス」「リーダーシップ研修」などのテーマが人気で、社労士や人事経験者の専門知識を活かせるものが多くあります。
また、研修会社に所属することで、企画や運営を任せられるため、講義に専念できるメリットもあります。
オンラインでの開催
オンライン研修は会場費などのコストがかからず、講師としての活動の場を広げやすい点がメリットです。
- 全国の企業に向けた研修
対面では難しい遠方の受講者向け - 録画コンテンツの提供
社内研修用に動画を作成し、社員が自由に視聴できる形式 - 短時間のスポットセミナー
1時間程度のセミナーを開催し、最新の法改正情報を提供
大学・専門学校・資格スクールの講師
大学や専門学校、資格スクールでは、社労士や人事の実務経験者を講師として招くことがあります。
例えば、社労士試験対策講座や人事関連の専門コースなどで、実務に基づいた講義を行うことができます。
特に、教育機関での講師経験があると、企業研修の講師としての信頼性も高まります。
セミナー自主開催
セミナーを自分で企画・開催することもできます。社労士が、企業向けに定期的な無料セミナーを実施し、そこからコンサルティング契約につなげるケースもあります。
また、SNSやブログを活用して情報発信を行い、関心を持った人を集めてオンラインセミナーを開催する方法もあります。
社員研修・セミナー講師のPR戦略
「研修を依頼したい」と思われる社労士になるためには、ブランディングとPR活動も重要です。
ホームページ・ブログを活用
社労士事務所のホームページに 「研修・セミナーの案内ページ」 を作り、実施できるテーマや実績を掲載しましょう。
さらに、ブログで人事労務に関する情報発信を続けることで、専門性をアピールできます。
SNSでの情報発信
SNSを活用して、企業が関心を持ちそうな情報を発信すると効果的です。
例えば、雇用関係の助成金や労務管理のポイントなどを発信することで、「この社労士に話を聞いてみたい」と思われる可能性が高まります。
メルマガやニュースレター
企業経営者や人事担当者向けに定期的なメルマガやニュースレターを発行して、研修の案内を行うのも効果的です。
企業とのつながりを作る
企業から直接依頼を受けるためには、人脈を広げることも重要です。
商工会議所や異業種交流会に参加
地域の商工会議所や経済団体が主催する交流会に参加して、企業経営者や人事担当者と接点を持ちましょう。
他士業との連携
他士業と連携して、合同セミナーを開催したり、顧問先の企業を紹介し合うのも有効です。
人材派遣会社やコンサル会社と提携
人材派遣会社や経営コンサルティング会社と提携し、研修講師としてのニーズを掘り起こすこともできます。
研修・セミナー講師の成功ポイント
企業からの依頼を継続的に受けるためには、 研修の質を向上させることが重要です。
わかりやすい資料を作成する
スライドや配布資料は、シンプルにわかりやすくまとめます。専門用語を多用せず、図表を活用すると理解しやすくなります。
単なるスライドの説明ではなく、実際の事例やストーリーを交えることで、受講者の理解が深まります。
参加型の研修を意識する
一方的な講義ではなく、ディスカッションやワークショップ形式を取り入れることで、実践的な研修になります。
受講者のフィードバックを活用する
研修後のアンケートから受講者の意見を収集して、次回の研修に活かすことで、より質の高い講義ができるようになります。
SNSやブログで発信する
研修内容や専門知識をSNSやブログで発信することで、講師としての認知度を高めることができます。
まとめ
社労士が社員研修・セミナー講師として活動するには、専門知識を活かしつつ、プレゼンテーションスキルやファシリテーション能力を磨くことが重要です。
まずは身近なセミナーや知人企業の社内研修などで経験を積んで、自分に合ったスタイルを確立してはいかがでしょうか。
社労士は、実務に基づいた具体的なアドバイスができますので、研修講師としての実践スキルを高めることで、長期的に講師として活動できるようになるでしょう。
人事部門の研修担当についてはこちらの記事でご紹介します。

社労士の会員区分についてはこちらの記事でご紹介します。

参考:厚生労働省、ハローワークインターネットサービス、商工会議所