社会保険労務士の資格に興味はあるけれど、どんな試験かよくわからないので、まずは独学で始めてみたいという人も多いのではないでしょうか。
社労士試験のテキストや過去問題集はたくさん市販されていますので、独学でスタートすることができます。
社労士試験には独学できる教材は豊富なのですが、いざ、試験勉強を始めてみようとすると、
「たくさんある教材のなかからどのテキストを選べばよいか?」ということに悩む人は多いと思います。
社労士試験は幅広い範囲から出題され、専門用語が多いので、効率的な学習には自分に合ったテキスト選びが重要です。
私は人事部に勤務していて、仕事の後に週2~3回と休日を使っての勉強でしたが、1回の受験で合格することができました。基本的な内容を効率よく学習できたからだと思います。
使った教材は、基本テキスト1冊、過去問題集1冊(一問一答の副教材は直前期に少し使いました)で、ほぼ独学スタイルでした。
ここでは、社労士試験の独学におすすめのテキストと選び方、使いこなし方についてご紹介します。
社労士試験は独学で合格できる?
まず、社労士試験に独学で合格できるのか?ということですが、もちろん合格することはできます。
ただし、通信講座や通学スクールなどで勉強するよりも自己管理が重要になるということはあります。
また、情報収集や教材選びの重要度も高くなります。
独学のメリットとデメリット
独学には、次のようなメリットがあります。
社労士が自分に合う資格なのか、合格するまで勉強を継続できるか不安がある人は、経済的に学習を進められる独学が安心でしょう。
一方で、独学のデメリットも押さえておく必要があります。
独学のメリット・デメリットを理解したうえで、自分に合ったスタイルを選ぶことが大切です。
独学にかかる費用
独学で社労士試験の合格を目指すには、基本テキストと過去問題集を用意する必要があります。同じシリーズにすると、進めやすいです。
独学であれば、1万円ほどで勉強できますので、他の学習法よりかなりお安く済みます。
学習法 | 費用 |
---|---|
独学(基本テキストと過去問題集) | 数千円~1万円 |
通信講座 | 5~20万円程度 |
資格スクール | 15~25万円以上 |
社労士のテキスト選び
社労士試験対策の教材はたくさん市販されていますので、法律の知識や資格の学習経験、人事労務系の実務経験などを考慮して、自分に合ったテキストを選びます。
失敗しないように、次のポイントを押さえて選びましょう。
- 最新版であること
- わかりやすいこと
- 試験範囲の分野が含まれていること
- シリーズに過去問題集があること
- 読みやすいこと
それぞれ説明していきますね。
最新版であること
社会保険労務士試験は8科目で10分野から出題されます。
基本はもちろんですが、改正点は出題される可能性が高いので、最新情報を押さえておく必要があります。最新の情報に更新されたテキストを使うことが必須です。
学習経験者が次の年も同じテキストを使うのは、すべての改正点を漏れなく自分で更新しなくてはならないので、不安な方法でおすすめできません。
わかりやすいこと
初めて勉強する人でも理解しやすい解説があるかどうかが重要です。ポイントや解釈などの参考情報の多いテキストはおすすめです。
試験範囲の全ての分野が含まれていること
社労士試験の全分野が含まれていることはもちろん、出題頻度の高い重要項目についてより深く学べる構成になっているテキストをおすすめします。
過去問題集があること
社労士の試験対策に過去問題集は必須です。同じシリーズの過去問題集もあるテキストは効率的に学習を進めやすいのでおすすめです。
読みやすいこと
色が少ない方が読みやすい人もいれば、フルカラーで視覚的に理解しやすい方が好きな人もいるでしょう。自分にとって読みやすいテキストを選ぶことが大切です。
社会保険労務士の独学におすすめのテキスト
社労士試験の基本テキストは幅広い試験範囲が網羅されているだけでなく、効率的に学習を進めることができるものを選ぶ必要があります。
市販で手に入るおすすめテキストをご紹介します。
『みんな欲しかった!社労士の教科書』
このシリーズは他の資格でも人気が高く、書店でもたくさん積まれていますね。初めて学習する人にとっても使いやすいテキストだと思います。
2025年版のテキスト
初学者も使いやすい
このテキストは初学者向けに作られていて、わかりやすさが人気です。フルカラーの構成で、図解やイラストが多く、視覚的に理解しやすくなっています。
条文の丁寧な説明
専門用語が多い社労士試験ですが、条文の背景や解釈に丁寧な解説が付けられていて、法律初心者でも安心して学ぶことができます。
重要箇所の強調
試験頻出の「重要ポイント」が視覚的に目立つ形で記載されています。強調された箇所やチェックすべき点が明確になっているので、学習する優先順位が自然と分かります。
『出る順社労士 必修基本書』
基礎知識のある人や学習経験者におすすめできるテキストです。安心して合格まで使えると思います。
2025年版のテキスト
出る順の構成
このテキストの最大の特徴は「出る順」で構成されていることです。膨大な試験範囲から重要ポイントを効率的に学ぶことができます。
重要箇所を明示
各科目で過去の出題や重要なポイントについて明確になっているので、覚えるべき箇所に集中しやすくなっています。
講義動画の視聴
LEC講師陣による「試験分析に基づく傾向と対策」・「科目別導入講義」など、学習に役立つ講義動画が無料で視聴できます。
『ごうかく社労士 基本テキスト』
大手スクールのテキストに比べると地味ですが、コンパクトにまとめられていて短期合格を目指す人におすすめです。私はこちらを基本テキストにしました。
2025年版のテキスト
初学者から経験者まで対応
初学者から学習経験者まで幅広い受験生に対応したテキストです。わかりやすさと試験に直結する内容が多くの合格者からも支持されています。
バランスのよい情報量
比較的薄く取り組みやすいテキストですが、試験で頻出する重要なポイントを的確に押さえていて、合格までに必要とする情報を1冊で学ぶことができます。
わかりやすい解説
解釈、ポイント、過去問の要旨などが詳細に解説されていて、法律を初めて学ぶ人でもスムーズに進めることができます。過去問との連動で知識が定着しやすいのも好評です。
『うかる!社労士 テキスト&問題集』
テキストと問題集が一冊になったスタイルです。いろいろ買っても全部できない、中途半端になってしまうという学習経験者におすすめです。
2025年版のテキスト
図解・イラストが豊富
専門用語が多くなりがちな社労士試験の学習内容も、フルカラーの誌面で視覚的に整理されていて、知識の定着をサポートしてくれます。
テキストと問題集が一体化
テキストと問題集が一体化しているので、「読んで→すぐに確認する」学習スタイルが可能。インプットとアウトプットを同時並行で進めたい学習経験者にぴったりです。
過去問をベースにした問題
実際の試験問題に即した内容になっています。選択式・択一式をバランスよく練習できます。
テキストの使い方
自分が使いやすいと思ったテキストを選んで、その教材を使い続けることが重要です。
基本テキストは1冊
テキストは1冊にして、繰り返し学習することで理解が深まります。いろいろな教材に手を出すことはおすすめしませんが、合わないと思ったら早めに見直す方がよいでしょう。
繰り返し学習する
まずは目次などで全体像を把握して、そのあと項目ごとに読み進めます。
繰り返し熟読することで理解が深まります。特に出題頻度の高い項目は重点的に学習します。
過去問題集を解く
テキストで学習した範囲の過去問題集を解きます。このインプットとアウトプットを繰り返すことで知識が定着し、実戦力も身につきます。
自分なりの書き込みをする
テキストに自分なりの補足や注意点を書き込むことで反復学習に役立ちます。
基本テキストの比較表
項目 | みんな欲しかった! 社労士の教科書 | 出る順社労士 必修基本書 | ごうかく社労士 基本テキスト |
---|---|---|---|
特徴 | ・フルカラーテキスト ・章ごとの「オリエンテーション」 ・図解・過去問分析などで理解を助ける | ・合格に必要な要点を凝縮 ・試験分析に基づいた効率重視の構成 ・確認問題付き | ・頻出論点を丁寧に解説 ・条文ベースで理解を深める構成 ・全科目をコンパクトに収録 |
難易度 | 初級~中級 | 中級~上級 | 中級~上級 |
シリーズの教材 | 入門書や過去問題集あり | 過去問題集や一問一答あり | 過去問題集や副教材あり |
価格 | 4,290円 | 4,070円 | 4,290円 |
出版社 | TAC出版 | 東京リーガルマインド | 中央経済グループパブリッシング |
2025年4月の情報ですので、最新情報は各出版社サイト等でご確認ください。
- 法改正に対応しているか
繰り返しになりますが、試験対策には最新情報が必要になります。最新版で法改正に対応しているものを選びましょう。 - 学習レベルが合っているか
初めて学習する人と法律の基礎知識がある人、社労士試験の学習経験がある人とでは最適なテキストは変わってきます。自分の理解度に合ったテキストを選びましょう。 - 人気だけで選ばない
多くの人が使っているテキストであっても自分に合うとは限りません。サンプルやレビューなどを確認して、自分にとって使いやすそうなものを選びましょう。
社会保険労務士の独学勉強法
独学で社労士試験に合格するためには、基本を押さえて効率的に勉強することが重要です。
社労士試験の出題範囲
まず、社労士試験の出題範囲を確認してみましょう。
社労士試験は8科目10分野から出題され、試験は午前に選択式(80分)、午後に択一式(210分)が行われます。
合格基準点は満点の7割以上ですが、試験結果を総合的に勘案して補正が行われます。それぞれの科目ごとに定められ、合格発表日に公表されます。
試験科目 | 選択式 | 択一式 |
---|---|---|
労働基準法及び労働安全衛生法 | 1問/5点 | 10問/10点 |
労働者災害補償保険法 (徴収法を含む) | 1問/5点 | 10問/10点 |
雇用保険法 (徴収法を含む) | 1問/5点 | 10問/10点 |
労務管理その他の労働に関する一般常識 社会保険に関する一般常識 | 1問/5点 1問/5点 | 10問/10点 |
健康保険法 | 1問/5点 | 10問/10点 |
厚生年金保険法 | 1問/5点 | 10問/10点 |
国民年金法 | 1問/5点 | 10問/10点 |
合計 | 8問/40点 | 70問/70点 |
独学の進め方
独学はモチベーションの維持や情報収集について不安がある人もいると思います。
社労士の独学は、次のステップで進めるとスムーズに始められます。
ステップ①
✓試験の全体像を把握する
社労士試験は幅広い範囲から出題されますので、まず基本テキストの目次などで全体像を確認して、科目や項目ごとの重要度や出題頻度を把握します。
ステップ②
✓具体的な学習計画を立てる
例えば試験日から逆算して、学習開始からの6ヵ月は基礎学習(インプット)中心、残りの期間は過去問題集(アウトプット)強化などのようにスケジュールを作成します。
ステップ③
✓併用する教材を選ぶ
基本テキストのほかにも過去問題集は必須です。独学をサポートする教材を活用しましょう。
- 過去問題集:7~10年分の過去問題集
- 副教材:補助としての参考書や問題集(必要であれば)
過去問題集の使い方については、こちらの記事でご紹介します。

独学の勉強ステップ
基本テキストはコンパクトにまとまったものでもそれなりにボリュームがあります。
「どうやって勉強すればいいの?」と不安になるかもしれません。
社労士の独学で必要なステップは、基本的には3つだけです。具体的には、次のような勉強をすると効果的です。
ステップ①
✓基本テキストをマスターする
いろいろなテキストに手を出すのではなく、自分がわかりやすいと思った基本テキストを軸にして学習を進めることをおすすめします。
- 自分にとってわかりやすいと思うテキストを選ぶ
- 試験に出やすい内容を重点的に学習する
- 出題が少ない箇所は思い切って飛ばす
ステップ②
✓過去問題集を解く
過去問題集を10回以上繰り返して、正解率が8割を超えるようになれば、合格レベルに近くなっていると考えられます。
- 基本テキストと同じシリーズの過去問題集を選ぶ
- 基本テキストで学んだ範囲の問題をやってみる
- 不正解はもちろん正解したところもテキストで復習する
必ず基本テキストとセットにしなければならないわけではありませんが、参照や順番など同じシリーズの方が勉強を進めやすいと思います。
ステップ③
✓模擬試験を受ける
本試験前に資格スクールなどで模擬試験が実施されます。独学でも1回は受験しておくことをおすすめします。
最新の試験傾向を知ることができますので、過去問題と同様にしっかり押さえておきましょう。
- 模擬試験はお試しではなく実力を把握するために受ける
- 間違えた問題はテキストで復習する
- 模擬試験の問題を繰り返す
私は次の順番で学習を進めました。
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労災保険法
- 雇用保険法
- 徴収法
- 健康保険法
- 国民年金法
- 厚生年金保険法
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
まとめ|最適なテキストを選んで独学で社労士合格へ
いかがでしょうか。社労士試験の独学におすすめのテキストを厳選してご紹介しましたが、自分に合った1冊を選べそうでしょうか。
私は最小限のインプットで短期合格したいと思い、コンパクトにまとめられている基本テキストを選びました。
自分にとってわかりやすいテキストでしたので、幸い1回の受験で合格することができました。人事部勤務で試験範囲は日常的に接する内容が多く、コンパクトにまとまったテキストが効率的な学習に役立ったのだと思います。
学習経験者であれば、これまで勉強してきた疑問点を解消できるような情報量のテキストの方が安心できるという人が多いかもしれません。使いやすさについても、それぞれの人で基準は違うでしょう。
テキスト選びは重要ですが、テキストだけでなく、過去問題集とセットで活用することで学習効果がアップします。
ぜひ、テキスト⇒過去問題集⇒テキスト⇒過去問題集を繰り返して知識を定着させてほしいと思います。
独学で社労士を目指す人にとって、最適なテキスト選びの参考になれば幸いです。
自習室の活用については、こちらの記事でご紹介します。

参照:社会保険労務士試験オフィシャルサイト、各書籍